第2次自転車活用推進計画

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ブリット野口です。

令和3年5月28日、第2次自転車活用推進計画が閣議決定された。(以下抜粋)

自転車の活用を推進するには、安全で快適に自転車を利用できる社会を実現し、自転車利用者の利便性を向上させる必要がある。東京オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシーとして、自転車フレンドリーなまちづくりや自転車文化を各地で定着させ、次世代へ継承していくことを踏まえ、長期的な展望を視野に入れつつ計画期間を2025年度までとしている。

第1次計画からの社会情勢の変化

「自転車を巡る現状及び課題」
自転車は環境にやさしいモビリティであるとともに、サイクリングを通じた健康づくりや余暇の充実等、人々の行動を広げ、地域とのふれあいや仲間とのつながりを取り持つコミュニケーションツールでもある。

一方で、昨今の社会情勢の変化は、自転車の在り方にも影響を及ぼしつつある。新型コロナウイルス感染症が拡大し、国民のライフスタイルや交通行動にまで影響を及ぼす中、人との接触を低減する移動手段として自転車の利用ニーズが高まった面もみられた。

また、情報通信技術の飛躍的発展に伴い、自転車を含め交通分野でもデジタル化が更に進展する可能性がある。さらに、高齢化社会の進展等を踏まえ、多様な者が安全かつ快適に利用できる自転車の普及を更に進めることが必要となっている。

都市環境、国民の健康増進、観光地域づくり、安全・安心といった各種の分野においても、自転車をとりまく状況や課題は、次に示すように多様化している。

➀都市環境
気候変動の深刻化に伴い、地球温暖化対策に関する世界的関心が高まっている中、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す我が国においても、地球温暖化対策は喫緊の課題である。

家庭から排出される二酸化炭素の約3割が自動車から排出されている中、自動車による移動は、一人での利用が約8割、5km以内の利用が約4割を占めることから、地球温暖化対策や渋滞対策を進める上で、短中距離の自家用車利用を公共交通機関の利用との組合せを含めた自転車の利用へ転換することが必要である。

自転車の利用促進を図るためには、自転車の利用環境を整えることが必要であるものの、歩行者と自転車が分離された自転車本来の通行空間の整備は断片的なものにとどまり、その整備延長は、令和元年度末時点で、約2,900kmにすぎない。この結果、平成22年から令和2年までの間に、自転車が関係する事故件数は半数以下に減少しているが、自転車対歩行者の事故件数は横ばいで推移している等、自転車対歩行者の事故への対応が課題となっている。

自転車通行空間の確保に向けては、地域において自転車ネットワークを計画的に整備することが必要である。そのため、地方公共団体の定める自転車活用推進計画については、自転車ネットワークに関する計画の位置付けの明確化や当該計画に基づく整備促進とその効果の分析など、自転車活用推進計画の質の向上が課題となっている。

このような状況にあって、全国の自転車の交通手段分担率は、長期的に見ると減少傾向にあり、特に地方都市圏は相対的に自転車分担率が低い。また、通学利用の多い未成年では自転車分担率が高いものの、成人後の利用は大幅に減少する傾向にある。路線バスの廃止等、地域公共交通サービスをめぐる環境が厳しさを増す一方、人生100年時代で高齢者が健康で生きがいに満ちた生活を送るためにも、運転免許返納後になって初めて自家用車以外の移動手段に移行するのではなく、それよりも早い段階で、公共交通とともに自転車が移動手段として利用されるよう促すことが必要である。

今後、コンパクト・プラス・ネットワークの取組や、歩行者利便増進道路(ほこみち)や滞在快適性等向上区域の活用をはじめとする「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの創出等のまちづくりを進める上で、身近でアクセシビリティの高い交通手段である自転車の利用促進は、地域を支える移動手段確保の観点から重要である。

近年の動向として、各地でシェアサイクルの導入が進展しているものの、公共的な交通としての在り方や持続可能な事業運営に課題があり、他の交通モードと連携した MaaS等デジタル化の進展も見据えつつ、支援方策を検討する必要がある。また、新たな低速小型モビリティの登場が、今後、自転車通行空間にも影響する可能性があることも踏まえつつ、自転車通行空間の整備を一層推進するとともに、地域における公共交通や自転車等の移動手段の最適な組合せ (ベストミックス)を実現するため、自転車通行空間の在り方を検討することが必要である。

➁国民の健康増進
糖尿病が強く疑われる人や、高齢者の要介護者等数が年々増加しており、メタボリックシンドロームやロコモティブシンドロームの予防等による健康寿命の延伸が大きな課題となる中、自転車は適正な運動強度を維持しやすく、脂肪燃焼等に効果的であり、生活習慣病の予防が期待できるほか、年齢を重ねた時の歩ける身体づくりに資するものである。

一方で、子どもの体力・運動能力は依然として低い状況にあるとともに、積極的にスポーツをする子どもとそうでない子どもの二極化が顕著となっていることから、手軽に運動できる自転車を活かし、身近でスポーツの楽しさや喜びを味わうことができる環境づくりを進めることが重要である。

また、自転車による運動効果としてメンタルヘルスの改善も期待されており、健康経営の観点から自転車通勤が労働生産性の向上に寄与する可能性も秘めている。加えて、新型コロナウイルス感染症の影響により、自転車通勤をはじめとする自転車の利用が更に増加する可能性がある。

一方で、交通事故の懸念のほか、駐輪スペースの確保や、通勤手当等の福利厚生面での制度の整備に課題がある等の理由から、従業員の自転車通勤を認めていない企業も存在する。

さらに、タンデム自転車やハンドサイクル等を活用した障害者スポーツは、障害者の生きがいやQOLの向上、健康長寿社会や共生社会の構築にも貢献するものであり、その推進が求められている。

➂観光地域づくり
高度に育成されたガイドが里山を丁寧に案内するサイクリングツアーが外国人観光客から高く評価される等、訪日外国人旅行者のニーズが、「モノ消費」から体験型観光の「コト消費」へ変化しており、滞在コンテンツの充実が求められてきた。

一方で、訪日外国人旅行者は、東京~大阪間のいわゆるゴールデンルートに集中しており、インバウンド効果を全国へ拡大することが重要な課題となっていた。
新型コロナウイルス感染症は観光地域づくりにも大きな影響を及ぼし、サイクルツーリズムについても、特にインバウンドは厳しい状況となっている。インバウンドの需要回復を見据え、自転車を活用した観光地域づくりは有望であるが、一方で、サイクリストの走行ニーズが高い地域において、サイクリストの受入環境や走行環 境が必ずしも十分整っていない等、サイクリング環境の整備が課題 となっている。

また、特に国内観光については、サイクルツーリズムが地域経済に与える効果として、日帰りであった場合の現地における消費額は小さいたため、宿泊を伴う滞在に導く必要がある。

➃安全・安心
令和2年中の自転車乗用中の死者で、最初に交通事故に関与した当事者(第1・第2当事者)のうち、法令違反が認められた割合は約8割と高水準であるとともに、自転車以外側にも何らかの法令違反が認められる場合があることから、通勤・配達目的での自転車利用ニーズの高まりも踏まえ、道路利用者全体の安全意識を醸成することが課題である。

このような状況において、自転車の安全利用を促進するためには、道路を利用する者に対し、自転車に関する交通ルールの周知と自転車事故の実態に即した安全教育を推進することが重要である。特に、自転車乗用中の死傷者のうち、65歳以上の高齢者が占める割合は約2割である。一方で、自転車乗用中の死者に占める割合は約7割であり、重点的な対応が必要である。
さらには、ヘルメット非着用の自転車乗用中の死者の約6割が頭部に致命傷を負っていることから、全ての年齢層の自転車利用者に対して、ヘルメットなど安全装備の装着を促すことが重要である。
自転車が加害者となる事故に着目すると、過去10年間で自転車 が関係する事故件数が半数以下に減少している中、自転車対歩行者の事故件数は横ばいで推移し、高額賠償事故も発生していることへの社会的対応が必要である。

また、消費者が安全性の高い自転車製品を購入することや、購入後に定期的な点検整備を行うことに加え、高齢化社会の進展等を踏まえ、多様な者が安全かつ快適に利用できる自転車の普及を更に進めることも重要である。

さらに、東日本大震災その他の近年の大規模災害において、ガソリン不足や交通渋滞の状況下等における移動手段として自転車が有効に活用されていること等を踏まえて、自転車が有する機動性を活かすことにより、災害時、特に大規模災害時における地域の安全・安心を向上させることが必要である。

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