狩猟の課題は「捕獲後の処分」

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ブリット野口です。

「閲覧注意」
「止め刺し」の残酷な写真が添付されています。苦手な方はページを閉じてください。

<狩猟に関する記事>
狩猟と自転車

狩猟生活はじめました
狩猟生活の現実
狩猟生活3年目の課題は「止め刺し」

「狩猟期間」
2023年度の狩猟期間が終わった。

佐賀県の狩猟期間は11月15日から翌年2月15日まで。
但し、くくり罠の場合、イノシシに限り3月15日まで延長される。
今期の捕獲数は、イノシシ5頭、タヌキ1匹。自治体の話では、厳木地区の捕獲数は昨年より大幅に減少しているとのこと。
昨年は捕獲ゼロだったが、今期は捕獲後の「処分」が課題となった。

狩猟期間終了直前で処分の課題が解決したので「狩猟の流れ」を説明する。


「狩猟の流れ」
①偵察⇒②罠の設置&見回り⇒③捕獲⇒④埋設⇒⑤搬出⇒⑥運搬⇒⑦搬入⇒解体

①偵察
ドローンを使って、俯瞰で地形や植生を把握する。

マウンテンバイク(E-MTB)を使って、森の中の様子を観察する。

林道やため池を通るイノシシの痕跡を調査し、猟場から3㎞圏内の情報と、地域の捕獲情報、過去の捕獲実績からイノシシの動きを分析する。

②罠の設置、見回り
自宅から50m以内、砂防ダムを起点とした獣道に「くくり罠」を設置する。

マウンテンバイクで周囲の情報を集め、獣道を徒歩で見回り。基本的には休まず、雨の日も雪の日も痕跡の観察を続ける。

③捕獲
餌場へ向かう獣道で捕獲する。

ロープワークを活用して前足、後足、鼻の3点固定、安全な状況で止め刺しを行う。
獲物が小さい場合、生け捕りも行う。

④埋設
搬出できない場合は捕獲した現場で埋設する。
自治体を対象にした調査では、捕獲された50%は廃棄され、そのうち70%が現場に埋設されている。

⑤搬出
くくり罠のメリットは持ち運びが簡単なこと。森の奥に設置することができる。その反面、捕獲した獲物の搬出が難しくなる。
くくり罠は足場が悪い場所に設置する。崖や谷が交わる複雑な地形は人が入れないので、イノシシは安心して動き回る。
搬出は砂防ダムに沿って携帯用の獲物搬送ソリ(協和テクノ)を使う。

ロープワークを使って斜面を引き上げる。

ロープと滑車を組合わせた倍力システムは、林業だけではなく、MTBトレイルを造成する時に使うテクニック。

⑥運搬
道路脇へ搬出したあとはサイクルトレーラーを装着したE-MTBを使って自宅へ運搬する。

⑦搬入
ハイエースのヒッチメンバーと連結したカーゴキャリアにイノシシを固定する。

イノシシに傷や泥がつかないようにブルーシートで包んで丁寧に扱う。
西多久の食肉加工所「西多久テラス」まで車で15~20分。(自宅⇒浪瀬⇒瀬戸木場⇒船山)

⑧解体
到着後、すぐに解体が始まる。

西多久テラスは地域おこし協力隊の木下さんが2023年9月に開業したイノシシの食肉加工所。
多久駅前で開催されたサンデーマーケット(軽トラ市)で出会い、「地域外で捕獲したイノシシの処分も請け負うので持ってきて」と言われ、タイミング良く2日後に捕獲したイノシシの処分をお願いした。

搬入したイノシシは17㎏のオス。生後1年経っていないだろうとのこと。
生け捕りで搬入したので、止め刺しと解体現場を見学させてもらった。


脂が少ないので、食用ではなく、ペットフードにするとのこと。ミンチになるまで2時間ほど、作業を見届けて、加工所を後にした。

「ジビエの現実」
イノシシのロースやバラ肉は100g500円~が相場。国産牛と変わらない。
①~⑧のコストを考えると、イノシシ肉は物理的に安価で提供することは不可能。
安定供給ができないイノシシ肉はジビエとして流通させるより、ペットフードとして販路を広げていかないと利益が出ないとのこと。

ペット関連の消費金額は右肩上がり、無添加のイノシシジャーキーはドッグランやペットショップで人気がある。

「今後の取組」
鬼の鼻山MTB大会やレンタルバイク納入など、多久市とは縁があるので、ジビエツーリズムの可能性を考えていく。今後は出勤途中に「西多久テラス」へイノシシを搬入するプランを検証する。また、「西多久テラス」には、狩猟に興味がある若者が集まり始めているので、猟友会とは違う活動で「狩猟の魅力」を発信していけば、ジビエツーリズムだけではなく、地域資源を活用したアドベンチャーツーリズムの拠点として育つ可能性もある。西多久テラスを起点とした里山サイクリングのルート調査も進めていく。

「狩猟をはじめて感じたこと」
地方では「イノシシを捕獲、解体して食べる」という「食文化」は破綻しかけているが、「地方に住み、自然と向き合える時間が増えると、観察力や創造力が養われる」という「野外活動体験文化」は辛うじて残っている。

狩猟を
地方の魅力として伝える「体験型旅行商品」として造成し、自転車と組合わせた体験コンテンツへ磨き上げを行いながら、旅行業として販売方法を探っていく。

入口から出口まで狩猟を説明するためには、猟師がガイドツアーを企画し、地域との合意形成を担い、販路やプロモーションを考える必要がある。地域の課題を解決し、ビジネスとして成立させるには、まだまだ先は長い。

「アドベンチャーツーリズムとは?」
アクティビティ、自然、文化体験の3要素のうち、2つ以上で構成される旅行のこと。旅行者が地域独自の自然や地域のありのままの文化を、地域の方と共に体験し、旅行者自身の自己変革・成長の実現を目的とする旅行形態のこと。「アドベンチャー」という言葉から、強度の高いアクティビティを主目的とすると連想されがちだが、アクティビティは地域をより良く知り、地域の方々と深く接する手段の一つであり、近年はハードなものより、むしろ散策や文化体験等のソフトで簡易なものが主流となってきている。

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