【狩猟生活3年目】くくり罠の最難関「止め刺し」とロープワーク(倍力システム)による安全な保定術
ブリット野口です。
※【閲覧注意】本記事には狩猟および「止め刺し」に関する描写・写真が含まれています。苦手な方はご注意ください。
<狩猟に関する記事>
狩猟と自転車
狩猟生活はじめました
狩猟生活の現実
狩猟生活4年目に突入「保定と搬出」
【1. 狩猟生活3年目の歩みと「毎日見回る」ことの重要性】
狩猟を始めて3年が経過しました。 1年目に狩猟免許を取得し、2年目に狩猟登録と猟友会へ加入。そして、3年目には「有害鳥獣駆除従事者」の許可を受けました。
有害駆除の許可を得ると年間を通して罠を設置できるようになります。しかし、草刈りが忙しい時期は毎日見回りができないため、無理に罠を仕掛けないようにしています。
狩猟者許可証と狩猟者記章
見回りは単に捕獲の有無を確認するだけでなく、「イノシシの痕跡(ブラッシングや掘り返し)」や「季節による森の変化」などの情報を集める重要な作業だからです。この情報収集を怠ると、罠の捕獲率は格段に下がります。
罠を踏んだイノシシの足を捉えることができなかった
【2. MTBとドローンで森を俯瞰する「新しい見回りスタイル」】
イノシシは餌を求めて1日に約2km行動します。そこで私は、日課として、マウンテンバイク(MTB)で3つのトレイルを走りながら見回りを行っています。
狩猟の見回りで使うマウンテンバイク
トレイルライドを兼ねるメリットは、尾根から谷、溜池へと繋がる「水の動き」や「里山全体の動物の導線」を効率よく把握できる点です。日照条件や水量の変化を観察し、トレイル上で痕跡(フィールドサイン)を追いかけます。
さらに上空からはドローンを飛ばし、猟場の植生や日照条件を俯瞰で観察しています。「MTBでのフィールドワーク」と「ドローンでのデータ収集」というデジタル・アナログを組み合わせた観察は、捕獲率を高めるだけでなく、自然を読む楽しみそのものを深めてくれます。
【3. くくり罠の最難関!倍力システム(ロープワーク)による保定】
くくり罠は軽量で設置や持ち運びが容易な反面、捕獲後の「止め刺し」において箱罠よりも危険が伴います。
タヌキが罠を踏みワイヤーが締まり前足を捉える
イノシシの足1本がワイヤーで繋がれている状態のため、暴れ回る獲物に不用意に近づくのは大変危険です。
押しバネと捩りバネは動きが違う
安全に接近して命を頂く(止め刺しする)ためには、事前の「保定(ほてい)」が不可欠になります。
罠の設置と見回りで使う道具
私の場合、装備を軽量化するために銃や電気ショックではなく「ナイフ」を選択しています。その際、以下の手順でロープワークを活用して危険を回避します。
・ロープ、カラビナ、滑車を組み合わせた「倍力システム(3倍力・4倍力)」を構築する
・イノシシと呼吸を合わせ、隙を突いて「鼻輪」をかける
・足輪をロープで引き上げて身体を倒し、「前足・後足・鼻」の3点を強固に固定する

ロープと滑車とカラビナを組み合わせ倍力システムを作る
自らの手でロープを仕掛け、目の前の獲物を制御していく作業は極限の緊張感を伴います。判断を一歩間違えれば大怪我に繋がるため、常に冷静な動作が求められます。
前足、後足、鼻の3点を固定する
力強く抵抗するイノシシを倍力システムで無力化した後、命を頂くナイフを刺し入れます。自然や命と真正面から向き合い、切なさを感じながら深く考量する時間を繰り返すことで、ハンターとしてのメンタルも鍛えられていきました。
イノシシを苦しめない止め刺しが課題
【4. くくり罠の攻略法は「ルアーフィッシング」と同じ】
独学でくくり罠を研究する中で気づいたのは、「くくり罠の設置はルアーフィッシング(特にバスフィッシング)と原理が全く同じである」ということです。どちらも「餌を使わずに獲物の行動パターンを読み、欺いて狙ったポイントへ誘い込む」という共通点があります。
例えば、「満月の夜に獲物が大きく動く」という気象データや月齢予測をベースに仕掛けたところ、狙い通り3日連続でイノシシが捕獲できました。気象条件や風向き、気圧の変化を読んでポイント(獣道)を絞り込む思考法は、釣りのノウハウがそのまま活きています。
ラインを巻き取るリールは自転車部品メーカーのシマノ製
【5. 里山の境界線を守る「攻撃の狩猟」と「防御の草刈り」】
近年、人里近くにイノシシが出没するニュースが増えていますが、その原因は「耕作不振地や放棄地の増加」により、里と山の境界線が曖昧になっているためです。人が手を入れなくなったことで伸び放題になった「藪(やぶ)」は、イノシシにとって格好の隠れ家となります。
害獣対策において最も重要なのは以下の2つの組み合わせです。
・攻撃の対策:狩猟や有害駆除による捕獲
・防御の対策:草刈りや下草払いによる隠れ処の除去(境界線の維持)
人間が境界線をしっかり管理・防御し、適度な距離感を保つことこそが、最も効果的な地域防衛になります。
森に残されたイノシシの骨
【まとめ:狩猟を楽しみながら里山の生態系維持に携わる】
狩猟免許を取得しても、実際の登録や見回り、費用の問題、そして、「止め刺し」の壁から、継続できずに辞めてしまう人が少なくありません。私にとって狩猟とは、単なる駆除作業ではなく「里山の生態系を学び、自然と一体になる田舎暮らしの醍醐味」です。
マウンテンバイクで森を駆け、ロープワークを駆使し、安全に配慮しながら自然の恵みをいただく。これからもイノシシや自然と適度な緊張感を保ちながら、持続可能な狩猟生活を楽しんでいきたいと思います。