狩猟生活3年目の課題は「止め刺し」
ブリット野口です。
「閲覧注意」
「止め刺し」の残酷な写真が添付されています。苦手な方はページを閉じてください。
<狩猟に関する記事>
狩猟と自転車
狩猟生活はじめました
狩猟生活の現実
「狩猟生活3年目に突入」
1年目:狩猟免許の取得。
2年目:狩猟登録と猟友会へ加入。
3年目:有害鳥獣駆除従事者の許可。
有害鳥獣駆除従事者の許可を受けると年間を通して罠を設置することができる。しかし、4月~10月は草刈作業が忙しく、罠を設置しなかった。理由は毎日の見回りができないからだ。
狩猟者許可証と狩猟者記章
見回りは捕獲状況の確認だけではなく、イノシシの痕跡や森の変化など、餌や生活環境の情報を収集するための作業も兼ねているので、見回りを怠ると捕獲はできない。
見回りで得た情報を分析し、イノシシの通り道を予測する。自分自身も森に溶け込み、自然とリズムを合わせる。生活の一部に狩猟を組み込めることが田舎暮らしの醍醐味でもある。罠を踏んだイノシシの足を捉えることができなかった
「木を見て森を見ず」
イノシシは餌を求めて動く。1日の行動範囲は2㎞。情報収集を兼ねて、3つのトレイルをマウンテンバイクで走るのが狩猟期間の日課となっている。トレイルライドのメリットは尾根から谷を経て溜池に繋がる水の動きや森の変化を把握できること。狩猟の見回りで使うマウンテンバイク
季節による日照条件、溜池の水位など、里山全体の獣の動きや植物の変化をトレイルライドで把握し、痕跡を辿りながらイノシシの行動を確認している。
くくり罠は自宅近くの獣道に設置している。猟場の見回りと捕獲の最適化は狩猟生活を維持しやすくなる。
また、上空にドローンを飛ばし、猟場の日照条件や植生を俯瞰で観察している。ドローンを使った罠の見回りなど、アナログとデジタルを組み合わせた新しい狩猟の可能性を考えたり、狩猟の楽しみ方は捕獲だけではない。
「昨年は捕獲ゼロ、今年は空弾きが少ない」
今年は狩猟開始2ヶ月でイノシシ3頭、タヌキ1匹を捕獲している。3日連続で捕獲したので「止め刺し」が大変だった。タヌキが罠を踏みワイヤーが締まり前足を捉える
くくり罠のメリットは運搬と罠の設置が簡単なこと。箱罠と比べると保管がしやすいので数が増えていく。今年は3ヶ増やしたので9ヶになった。ちなみに、罠は30ヶまで設置可能。罠猟では捕獲後の「止め刺し」が危険なくくり罠より箱罠を選ぶ人が多い。押しバネと捩りバネは動きが違う
「止め刺し」の手段は「銃、電気ショック、ナイフ」の3つ。ナイフはイノシシと接近戦になるので危険が伴うが、道具を減らすためナイフを選択。罠の設置と見回りで使う道具
くくり罠で捕獲されたイノシシは足一本をワイヤーで木に固定されている。ワイヤーで結ばれた範囲を動き回るので、まずはロープワークで動きを制御する。ロープと滑車とカラビナを組み合わせ倍力システムを作る
身近な道具であるロープを使って、イノシシを制御していく作業は獣と素手で対峙している緊張感がある。イノシシと呼吸を合わせて鼻輪を掛けたり、足輪をロープで吊り上げて寝かせたり、保定作業は判断を間違うと命の危険が伴う作業だ。前足、後足、鼻の3点を固定する
力が強いイノシシを「倍力システム」を使ったロープワークで固定した後、命を頂く「止め刺し」が待っている。自然と向き合い、自分と向き合い、切ない気持ちでナイフを突き刺す。そして、狩猟の意味を深く考える時間を繰り返すことで、メンタルが強くなっていく。イノシシを苦しめない止め刺しが課題
「里山の境界線を維持する」
近年、イノシシが街に出没する話題を耳にするが、人里に餌があることが影響している。野良猫の餌に反応したり、人間を恐れないイノシシが増えている。そして、耕作放棄地が増え、里と山の境界線が曖昧になり、イノシシが身を隠すのに最適な「藪」が増えていることも原因だ。草刈作業が疎かになるとイノシシは近寄ってくる。
「攻撃である狩猟」と「防御である草刈」の組み合わせが、害獣対策には有効だ。狩猟を通じて、里山の食物連鎖を理解すると、イノシシの怖さはなくなった。
「くくり罠はルアーフィッシングと同じ」
狩猟を始めるまで箱罠は見たことはあったが、くくり罠を見たことはなかった。
独学で狩猟を始めたので、餌を必要としないルアーフィッシングの技術を参考にしている。くくり罠とルアーフィッシングの共通点は獲物の行動を把握して騙すこと。獲物の行動パターンを読むことも同じ。「満月の夜に獲物は動く」という予測は的中し、満月は3日間連続で捕獲となった。ちなみに、自転車愛好家である遊漁船の船長から気象分析のアドバイスを受けている。特にバスフィッシングは参考になる。ラインを巻き取るリールは自転車部品メーカーのシマノ製
「狩猟の課題」
仲間と一緒に始めた狩猟免許の取得から3年が経過した。来年は更新の時期を迎える。狩猟登録をして罠を設置しているのは私だけ。3名は更新をするのか不明だ。
免許を取得しても実際に登録する人は66%という統計から、狩猟を始めるまでのハードルが高いことがわかる。それなりの費用も発生するので、有害鳥獣駆除の報奨金で費用を補填する人がほとんど。森に残されたイノシシの骨
私は「狩猟そのものを楽しみながら、里山の生態系維持に携わっていきたい」という考えなので、イノシシと適度な距離を保ちながら、狩猟とマウンテンバイクを組み合わせた田舎暮らしを続けていきたい。