狩猟生活の現実
<狩猟に関する記事>
「狩猟は創造力が養われる」
ブリット野口です。
2022年12月から始めた狩猟生活は、90日間の狩猟期間を終え、捕獲ゼロという結末を迎えた。
ねじりバネ3ヶと押しバネ3ヶをけもの道に設置し、見回りを繰り返す。
イノシシの警戒心が弱かった12月は「空弾き」が続き、「そのうち捕獲できるだろう」と安易な考えになっていた。しかし、設置場所に気づかれ、徐々に反応が薄くなっていく。
雨の日も雪の日も見回りを続けると、イノシシの痕跡や通り道の判別はできるようになったが、くくり罠のワイヤーの動きをコントロールすることが難しく、またもや「空弾き」が発生した。
踏板の負荷調整、バネの抵抗など、ワイヤーの動きを妨げない設置方法を試すが、結局、最適な答えを見つけることができなかった。
獣が罠を踏んでワイヤーが足を括れないことを「空弾き」と呼ぶ
近隣に住むベテラン猟師は定期的に箱罠でイノシシを捕獲しているので、イノシシの習性や行動が読めているのだろう。餌にサツマイモを加えたり、工夫を凝らしている様子が伺える。
自然を理解し、植物の変化や動物の行動を読み解く能力を身に付けないと、くくり罠でのイノシシの捕獲は難易度が高くて難しい。餌付け方式の箱罠が初心者向きだと感じた。
箱罠は多頭の捕獲が可能
新規に狩猟免許を取得した者の免許更新率は15%と言われ、狩猟を始めた新人は1年目に1頭も捕獲できず、止めてしまうと嬉野の太田製作所で聞いた。
有害駆除は捕獲する事で報奨金が発生するので、捕獲できないと費用対効果が低いことになり、モチベーションが下がる。
私の場合、狩猟を自然を利用した遊びと考え、見回りとトレイルライドを同時に楽しんでいるので、遊びに対するコストパフォーマンスは高い。さらに、イノシシの痕跡調査とトレイル整備を同時にできるので、タイムパフォーマンスも高い。
狩猟の目的を「捕獲」から「創造力を養う遊び」に変えれば、けもの道を見つけたり、そこを自転車で走る技術を考えたり、自然に親しむ時間が増え、新しい発想に繋がっていく。
「狩猟は見回りの繰り返し」
先日、多久の山中で自転車散策をしていると、箱罠の見回りをしている猟師に出会った。自転車を使った狩猟の見回りの可能性を伝えると「軽トラと原付バイクで箱罠の見回りをしているが、電動アシスト自転車でサイクルトレーラーの見回りは罠の近くまで行けるのでいいね」と会話が弾んだ。箱罠10ヶの見回りと餌を運ぶのが大変で、後継者もいないとのこと。
ブリットサイクリングクラブは、狩猟、不法投棄の監視、林道の草刈や清掃など、自転車を使って地域の課題を解決することを目指しているので、自転車を活用した実証実験を続けていきたい。
「イノシシは捕獲より警戒させることが重要」
出会った猟師に話を聞くと、猟具は箱罠か猟銃のどちらかで、くくり罠は効率が悪くて危険と言われた。
私自身、自転車で罠を手軽に持ち運べることにメリットを感じているので、来期もくくり罠に挑戦する。
今期は捕獲ができず、リアルに身の危険を感じる機会はなかった。しかし、箱罠に捕獲されたイノシシを観察する機会は多々あり、扉に体当たりしてくる突進力は、剣道で例えると、遠間からの「突き」に似たものがある。
くくり罠のワイヤー1本で脚を繋がれたイノシシと対峙する緊張感は、箱罠とは比べものにならないだろう。
今期は「止め刺し」という「命」に向き合う機会を得られなかったので、来期は捕獲を目指し、命を頂くことの尊さを学べれば幸いである。