100年の時をブロンプトンで辿る。「幻の鉄路」と塩田津の物語。

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ブリット野口です。

柔らかな春の光の中、5台のブロンプトンが静かに走り出す。

今回、私がガイドとして企画したのは、単なるサイクリングではありません。それは、地図から消えた「鉄路」の記憶を呼び覚まし、最新の新幹線で過去から現代へとワープする、時空を駆ける25kmの物語です 。

祐徳軌道跡をゆく
火の粉を散らした蒸気機関車の記憶
旅の始まりは武雄の宇宙科学館 。

ここから南へ向かう道は、かつて「祐徳軌道」という軽便鉄道が走っていた場所です 。1904年に馬車鉄道として産声を上げ、のちに小さな蒸気機関車へと進化したこの鉄路は、かつて、火の粉を散らしながら、武雄と鹿島を結んでいました 。

参加者の皆さんと一緒にペダルを漕ぎ出すと、すぐに不思議な感覚に包まれます。現在の県道に残る自動車道にしては、あまりにも「不自然に緩やかなカーブ」 。それこそが、かつて、非力な機関車が喘ぎながら坂を登るために描いた、鉄路の確かな証なのです 。

志田焼の里博物館にそびえる巨大な煙突を眺めながら、私たちは、100年前の旅人が見つめたであろう景色の中へと深く入り込んでいきました 。

塩田津・塩田宿
川港と鉄路が交差した「白壁の結節点」
1時間ほど走り、今回のメインスポットである「塩田津・塩田宿」へ到着 。

ここは長崎街道の宿場町であると同時に、有明海の干満差を利用した「川港」としても繁栄した場所です 。重厚な白い漆喰壁が美しい「居蔵造(いぐらづくり)」の街並みは、当時の豪商たちの富の象徴 です。

実は、この場所は、明治・大正期には、武雄からの「祐徳軌道」と、嬉野への「肥前電気鉄道」が接続する佐賀県西部最大の交通ハブでした 。私たちは、ここで自由時間をとり、ローカルフードを楽しみます 。

岳の信太郎めん立喰庵」
特産の喉越し良い麺は、後半の走りに向けた最高のエネルギー補給です 。

「MILKBREW®COFFEE」
牧場直送ミルクのソフトクリームを片手に、かつての塩田宿の賑わいに思いを馳せます 。

肥前電気鉄道跡
大正モダンを運んだ「最先端の路面電車」
午後の部は、塩田から嬉野温泉を目指す9.7kmの旅 。ここからは、九州で2番目に誕生した「幻の路面電車」、肥前電気鉄道の跡を辿ります 。当時としては画期的な電化路線で、ハイカラな温泉客を運ぶ最先端の乗り物でした 。

ブロンプトンの心地よい速度感は、当時の電車のスピードと不思議にリンクします 。吉浦神社の美しい石造眼鏡橋で愛車とのフォトタイムを楽しみ、ノスタルジックな木造校舎が残る旧美野分教場へ 。

住宅の合間に突如現れる橋脚の跡や駅舎を彷彿とさせる空間を見つけるたび、モノクロームの歴史が鮮やかなカラーで蘇る。それは、車では通り過ぎてしまう、自転車だからこそ出会える「歴史の落とし物」を探す冒険です 。

嬉野温泉駅から武雄温泉駅へ「6分間の未来へワープ」
14:20に嬉野温泉駅に到着 。ここでブロンプトンの真骨頂を発揮します。わずか数十秒でスーツケースサイズに折り畳み、駅のホームへ 。

15:07発の西九州新幹線「かもめ」に乗車 。かつて、路面電車が1時間以上かけて結んでいた道のりを、時速260km、わずか6分で駆け抜けます 。

「点」ではなく「線」で歴史を知る。自らの足で漕いだ距離感を肌で感じているからこそ、この6分間のワープは驚異的な体験となります 。路面電車が「温泉客のための最先端」であったように、新幹線もまた、令和の新しい旅の形を象徴しているのです 。

歴史を知ることで、景色はもっと面白くなる
武雄温泉駅で下車し、再びブロンプトンを展開してゴール地点へ 。
今回の旅で私たちが体感したのは、単なる移動距離ではありません。大正時代の先駆的な交通インフラから、令和の最新技術までが折り重なった「歴史の地層」そのものです 。

歴史を知ることで、いつもの景色はもっと面白くなる。
小さな車輪と一緒に、あなたも100年の物語を巡る旅に出かけてみませんか?

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