2026年1月の猟果報告:データが示す「異例の暖かさ」と「乾燥」の誤算
ブリット野口です。
私は、佐賀県唐津市厳木町在住のくくり罠猟師です。1月も最終日を迎えましたが、私の腰には一頭の猪もぶら下がっていません。 副業猟師として、限られた時間の中で山に入り、猪との知恵比べを続けてきましたが、今月の結果は「完敗」の一言に尽きます。
【2026年1月 実績】
捕獲数:0
空弾き:4回
罠の踏板は落ちている。猪は確実に踏んでいる。しかし、ワイヤーが足首を捉える前に、猪は闇へと消えていきました。
「なぜ、あと数センチのところで逃げられたのか?」
その答えを求めて、アメダス唐津の2025年と2026年の日次データを精査しました。そこには、平均値だけでは見えない「猪を有利にさせた気象条件」が浮かび上がってきました。
1. 1月中旬の「異常な高温」が猪を機敏にさせた
2025年と2026年の1月の平均気温は、奇しくも同じ6.5℃。しかし、日ごとの推移を見ると、今年がいかに「変則的」だったかがわかります。
注目すべきは、1月15日から19日にかけての推移です。 2026年のこの期間、アメダス唐津は最高気温が16.9℃〜19.5℃という、1月としては異例の数値を記録しました。
通常、1月の猪は、寒さで代謝を抑え、動きが鈍くなるものです。しかし、この数日間の「春先のような暖かさ」によって、猪の身体能力は極限まで高まっていました。私が仕掛けた罠の作動速度は、あくまで「冬の鈍い動き」を想定したものでした。しかし、現場にいたのは、暖かい日々で体が軽くなった、極めて機敏な猪だったのです。ワイヤーが締まるコンマ数秒の隙に足を抜かれた。これが空弾きの最大の要因だと分析しています。
2. 極度の「乾燥」が罠の感度を狂わせた
もう一つの大きな要因は、雨のタイミングです。 月間降水量は、昨年と同じ26mm程度ですが、2026年は20日を過ぎるまで、まとまった雨がほとんど降りませんでした。
厳木町本山周辺の土質は、乾燥すると粘り気を失い、砂のようにサラサラになります。 適度な湿り気があれば、土が踏板に密着し、猪の荷重をダイレクトに伝えてくれますが、乾燥した土は、猪が踏んだ瞬間に「逃げて」しまいます。その結果、十分な体重が乗る前に罠が中途半端に作動し、足を捉えきれなかった。また、雨による消臭効果が得られず、猪が罠の存在を直前で察知し、警戒しながら踏んだことも「浅い掛かり」を招いたと考えられます。
3. 2月への戦略:データから導き出した「三つの一手」
1月の敗因は、技術不足というよりも「去年と同じ条件だ」と思い込み、日ごとの気象変化に罠の調整を合わせられなかったことにあります。この反省を活かし、2月は以下の戦略で挑みます。
①「土の調整」の徹底
乾燥が続く日は、現場の土をそのまま使うのではなく、あえて少しの水分を含ませてから罠を隠します。これにより、猪が確実に踏み込んだ瞬間まで作動を安定させます。
②「踏板の感度」の再設定
高温で活性の高い猪を想定し、あえて「遊び」を深く取ります。確実に体重が乗り切った瞬間に跳ね上がるよう、バネと踏板のバランスを微調整します。
③「氷点下」の朝を狙う
2月に入り、ようやく冬らしい冷え込みが戻ってきました。アメダス予報で最低気温が氷点下になる日こそ、猪の動きが鈍る最大のチャンスです。そのタイミングを逃さず、罠を見回ります。
1月に起きた4回の空弾きは、猪たちが私に「自然の変化を見逃すな」と教えてくれた貴重なデータです。
統計データが導き出す『冬の再来』を合図に、私の2月の猟が始まります。分析した仮説が正解だったのか、その答え合わせのために、私は再び山へと入ります。
<参考データ>
気象庁:アメダス唐津 2025年/2026年1月 観測データ
Tags: 狩猟