12月の試練に終止符!エリア③のダブルヒットと「痕跡」が語る山の真実
ブリット野口です。
2025年12月29日。私にとって、今年の12月は「試練」の月でした。以前のブログでも書いた通り、罠に掛かった猪が自らの足を噛みちぎって逃走するという凄惨な現場を目の当たりにし、自然の執念と自分の甘さを痛感させられる日々を過ごしました。
気づけばカレンダーは年末を指し、このままでは「12月の捕獲ゼロ」という、猟師として最も不本意な結果が現実味を帯びていました。
「遊漁船の船長のように、釣れない時こそポイントを変え、仕掛けを疑い、猪の思考に歩み寄る」
そう自分に言い聞かせ、エリアの選定から見直して辿り着いたのが「エリア③」でした。この場所が、土壇場での大逆転劇の舞台となったのです。
「12月29日、運命のダブルヒット」
12月29日。押し迫る年の瀬、冷え込みが一段と厳しくなった早朝でした。エリア③の緩やかな斜面に仕掛けた罠を確認しに向かうと、そこには、これまでの沈黙を切り裂くような光景が広がっていました。
10メートルという至近距離。そのわずかな間隔に設置した2か所の罠に、中型のメスが2頭、同時にかかっていたのです。
1頭でも安堵するところを、まさかの「ダブルヒット」。猪に足を噛みちぎられたあの日の悔しさが、冬の霧の中に溶けていくような感覚でした。なんとか12月の「捕獲ゼロ」という最悪のシナリオを回避できただけでなく、猪たちがこのエリアを「通り道」として、あるいは「生活圏」として強く意識していることを確信させる結果となりました。
中型のメス2頭という結果は、群れの存在を示唆します。あの逃げられた猪が残した教訓から、「罠の作動速度」や「ワイヤーの強度」を修正しました。そして、「獲物との心理戦」を深く考え直した成果が、ようやく形になった瞬間でした。
「痕跡調査から見えた里山の奥の猪の現在地」
捕獲の余韻に浸る間もなく、私はさらに里山の奥へと足を踏み入れました。なぜ、このタイミングで、この場所だったのか。その答えを探すための痕跡調査です。山の中を歩き回り、猪たちの「動線」を一つひとつ紐解いていくと、興味深い事実が浮かび上がってきました。
まず、全体として猪の「動き」自体は非常に少ないということ。寒さの影響か、あるいは餌場の変化か。無闇に移動距離を伸ばさず、特定の狭い範囲でエネルギーを温存しているような印象を受けました。
しかし、その一方で「ヌタ場(泥浴び場)」の活性は驚くほど高い状態でした。この時期、猪たちは寄生虫を落としたり、体温を調整したりするためにヌタ場を重宝します。昨年、見つけたヌタ場を確認すると、猪たちが日常的に、かつ頻繁に利用している「活きたヌタ場」でした。動きが少ない中で、ヌタ場を中心としたルーチンワークを繰り返している。これこそが、今回のダブルヒットを導き出した鍵だったのかもしれません。
一方で、意外な発見もありました。「昨年の寝屋(ねや)」が、今年は全く使われていない様子だったのです。「昨年と同じ場所に罠を仕掛ければ獲れる」という経験則は、この山では通用しません。猪たちのコミュニティもまた、天敵の存在や環境の変化に敏感に反応し、その居場所を変えていく。昨年の成功体験を一度捨て、「今の山」の表情を読み取ることの大切さを改めて突きつけられました。
「遊漁船」から学んだ思考の結実
以前のブログで綴った「遊漁船の理論」。
「潮を読んで山を歩く」遊漁船の経験が里山の猪猟を変えた話とは?
それは、「釣れない原因を環境のせいにせず、自分の戦略をアップデートし続ける」という決意表明でもありました。
もし、足を噛みちぎられたショックで立ち止まっていたら?もし、去年のデータだけを信じてエリア③を軽視していたら?この12月29日の逆転劇は起こり得なかったでしょう。
猪が逃げた痕跡は、私に「絶望」ではなく「改善点」を与えてくれました。ヌタ場の活性と移動距離の低下。そして、寝屋の移動。これらのパズルを組み合わせて導き出したポイントで、猪と知恵比べをする。これこそが、狩猟という行為の本質的な面白さであり、厳しさなのだと痛感します。
新年へ向けて
今回の捕獲で、12月のボウズは免れました。しかし、これはあくまで「一勝」に過ぎません。山の中では、まだ見ぬ大物や、より賢い猪たちが、こちらの隙を窺っています。年末の調査で見えた「動きの少なさ」と「ヌタ場の活性」。この情報を元に、1月の戦略を練り直す必要があります。猪たちがどこで眠り、どこで泥を浴び、どのルートを通って餌場へ向かうのか?古い寝屋を捨てた彼らが、次に選んだ安息の地はどこなのか?
試練の12月を乗り越え、私の感覚はより鋭利に研ぎ澄まされた気がします。猪に足を噛みちぎられた痛みは、今の私にとって、山を読み解くための「羅針盤」となりました。来年もまた、里山の深淵で、猪たちとの真剣勝負が続きます。「獲れない時こそ、考え抜く」 その先にしか、本当の歓喜は待っていません。
来年もブリットハンティングクラブの活動を、里山での狩猟生活を通してお届けします。
皆様、良いお年をお迎えください。
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