10月の草刈りに潜む罠!気温5℃低下と2スト草刈機のキャブセッティング見直し

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ブリット野口です。

10月に入り、今年もいよいよ最後の草刈りのシーズンとなりました。気持ちよくエンジンを回して、きっちり作業を終わらせて、草刈機を保管してください。しかし、この時期の草刈りには、見落としがちな落とし穴があります。それは、気温の低下です。

昼間はまだ暖かい日もありますが、朝晩を中心に気温は着実に下がっています。もし、前回の草刈りから5℃以上気温が下がっているなら、あなたの愛用している2ストローク草刈機は、本来のパフォーマンスを発揮できていない可能性があります。最後の作業をスムーズに進めるためにも、今回は「気温低下とキャブレターセッティングの見直し」の重要性について解説します。

なぜ気温が下がるとエンジンの調子が悪くなるのか?
2ストロークエンジンがスムーズに動くためには、燃料と空気の混合比率が非常に重要です。この混合気を調整しているのがキャブレターです。
気温が下がると、空気は密度が高くなります。簡単に言うと、冷たい空気はより多くの酸素を含みます。これは、エンジンの吸い込む空気に含まれる酸素の量が、暖かかった時期よりも多くなることを意味します。

例えば、30℃の気温で、完璧に調整されていたキャブレターセッティングのまま、25℃の気温に下がった環境で、エンジンを始動させるとどうなるのか?
エンジンは、以前よりも多くの酸素を取り込んでいるのに、キャブから供給される燃料の量は変わっていません。結果として、混合気は「燃料が薄い」状態になってしまいます。これは、燃料に対して空気が多い状態です。

薄すぎる混合気が引き起こすトラブルの全容
燃料が薄い状態、いわゆる「リーンバーン」が続くと、エンジンには深刻な悪影響が出ます。単にパワーが出ないだけでなく、最悪の場合、エンジンが再起不能になります。

➀始動不良・アイドリング不安定
混合気が薄いため、火花が飛びにくくなり、エンジンのかかりが悪くなります。かかってもアイドリングが不安定で、すぐにエンストしてしまいます。
➁パワー不足(吹け上がりの悪さ)
燃料が足りないため、いくらアクセルを開けても最高回転数まで上がりきりません。草刈りの作業効率が著しく低下します。
➂オーバーヒート(焼き付きのリスク増大)
これが最も危険です。混合気が薄いと燃焼温度が異常に上がりすぎます。燃料は潤滑油(2ストオイル)の熱を奪う冷却の役割も担っていますが、その燃料が少ないため、エンジン内部(ピストンやシリンダー)の冷却が間に合いません。熱で膨張したピストンがシリンダーの壁に張り付き、最悪の場合、「エンジン焼き付き」を起こしてしまうのです。最後の草刈りで焼き付いてしまっては元も子もありません。

気温の低下は、性能の低下だけでなく、エンジンの寿命に関わる重大な問題なのです。

失敗しないキャブセッティング見直しの具体的な手順
「調整」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、ポイントを押さえれば大丈夫です。調整するのは通常、キャブにあるL(ロー)とH(ハイ)の2つの調整スクリューです。

⒈基本の知識:LスクリューとHスクリューの役割
➀Lスクリュー(低速域)
エンジンの始動からアイドリング、そして中速域の混合気を調整します。始動性やアイドリングの安定性に直結します。
➁Hスクリュー(高速域)
アクセル全開時の最高回転域の混合気を調整します。エンジンの最大パワーと、焼き付き防止のための冷却に関わる最も重要なスクリューです。
2. 調整の方向性:まずは「濃くする」
気温低下で混合気が「薄く」なっているのですから、調整の基本は「燃料を濃くする」方向、つまりスクリューを反時計回りにゆっくり回して「緩める」方向になります。
3. Lスクリューの調整:始動性と安定性
エンジンを始動し、暖機運転を行います。アイドリングをさせながらLスクリューを調整します。
Lスクリューをゆっくりと緩め(燃料を濃くし)ていき、アイドリングが最も安定し、そこからアクセルを急に開けたときにスムーズに吹け上がるポイントを探ります。
4. Hスクリューの調整:パワーと安全性の確保
Hスクリューは、最高回転時の安全性を確保するために最も重要です。
アクセルを全開にし、最高の回転数が得られるポイントを見つけます。しかし、最高回転が出た状態は「薄い」状態に近く危険です。最高の回転が出たところから、必ず反時計回りに1/8~1/4回転ほど戻し(緩め)、「少し甘い(濃い)設定」にします。この少し「モタつく」手前の「濃いめ」の設定が、エンジンを焼き付きから守るための安全策となります。

5℃低下の目安と判断のサイン
「前回の作業から5℃下がった」という情報は、セッティングを見直す明確なサインです。
➀エンジン音の変化
高速回転時に「キーン」という甲高い金属音が目立つようになったら、混合気が薄く燃焼温度が上がりすぎている危険信号です。すぐにHスクリューを緩めて燃料を濃くしてください。
➁体感的な判断
以前はすぐに始動したのに、チョークを引く時間が長くなった、アクセルを入れてもレスポンスが鈍い、パワーが足りないと感じたら、見直しのタイミングです。

最後の作業を万全に終えるために
気温低下によるキャブセッティングの見直しは、エンジンの性能を引き出すだけでなく、故障を防ぎ、寿命を延ばすための予防策です。
最後の草刈りを万全の態勢で終え、来春また気持ちよく始動させるためにも、愛機の声(エンジン音)に耳を傾け、適切な調整を行ってから作業に臨みましょう。
作業後は、燃料を抜き、清掃を行い、来シーズンに備えた適切な保管を忘れずに行ってください。

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