究極のジビエを求めて〜最高の炭と出会う旅〜
ブリット野口です。
突然ですが、皆さんは「最高のジビエ」と聞いて、どんな料理を想像しますか?
自転車仲間と狩猟免許を取得して、狩猟を始めて、4年が経ちました。
ブリットハンティングクラブを立ち上げ、美味しい猪肉を食べるために、くくり罠での生け捕りに挑戦しています。
休日になると、猪肉バーガー、猪肉の赤ワイン煮、猪肉の炭火焼など、ジビエ料理の食事会を料理人と一緒に開催しています。
どれも最高の思い出ですが、調理するたびに一つの「壁」にぶつかっていました。
それは「火」です。
猪肉は、その肉質や風味の個性が強いため、火加減一つで出来上がりが全く変わってしまいます。猪肉を美味しく食べるために必要な要素は以下の3点です。
➀遠赤外線効果で旨味を閉じ込める
➁高温で表面をパリッと焼き上げる
➂煙で香りを付加する
これらの要素をすべて満たし、ジビエの魅力を最大限に引き出すのに最適なのが「炭火焼」です。しかし、市販の木炭ではダメなんです。今まで色々な種類の木炭を試しましたが、納得のいくものに出会えませんでした。煙が出すぎたり、火力が安定しなかったり、木炭自体の香りがジビエの風味を邪魔してしまったり…。
そんな悩みを抱えていた時、ある本に出会い、私の心が動きました。
「炭火で焼く」
カリフォルニア発、進化系BBQキュイジーヌ
本当に最高のジビエを食べたいなら、肉だけじゃなく、最高の火も自分で作るしかない。
私は決意しました。ジビエに最高の相棒となる木炭を自分の手で焼こう!そして、炭火の火加減を自由に操る技術を学ぼう!
初心者が炭焼きに挑戦!
炭焼きに挑戦すると決めてから、まず、炭窯を持つ仲間に相談をしました。仲間が持つ炭窯は、石を積み上げ、土で全体を覆うシンプルな構造です。自家消費が目的で、年に1回、家族で細々と炭を焼き続けているという状況でした。
炭焼きは、知れば知るほど奥が深く、木の種類、窯の構造、温度管理、火入れのタイミングなど、資料も参考書もなく、目で見て覚える職人の世界でした。しかし、悩んでいる暇はありません。私はすぐに、次回の炭焼きを手伝うことにを決めます。
そして、ブリットハンティングクラブのメンバーも狩猟だけではなく、炭焼きにも挑戦することになりました。
料理人から、ジビエのように身が引き締まった肉質は、安定した火力が長く続く硬い炭と相性が良いとアドバイスがあり、使用する木材は、里山で手に入る「樫」にしました。樫の木は硬く、火持ちが良い良質な木炭になると言われています。
樫の木は、私が住む厳木の雑木林から調達することにしました。私が獲る猪は、厳木の雑木林に棲み、樫の実を食べて育ちます。樫の木と猪は、どちらも原始的な営みで育まれた森の恵みです。同じ土地で育った猪の命を頂き、雑木林の樫の木を伐採して木炭にする。猟師は、狩猟だけではなく、里山を適切に管理する役割も担っています。
初めての木炭作りは、想像を絶する重労働でした。樫の伐採からスタート。チェーンソーで雑木林を切り開き、樫の木を倒し、同じ長さに切る。
そして、軽トラックで七山へ運び、薪割機で丁寧に割っていく。汗だくになりながら作業を進め、なんとか、炭焼きの準備が終わり、達成感で胸がいっぱいになりました。
失敗と学びの日々
いよいよ火入れの日。
窯の中に樫の木を丁寧に並べ、下から少しずつ火をつけます。火が全体に回るように、絶妙なバランスで薪をくべていくのですが、これが本当に難しい。
窯の温度がうまく上げらず、薪がどんどん無くなっていく…。
温度計で窯の温度を測りながら、内部の状況を予測します。試行錯誤を繰り返し、火力の強さ、薪の組み方を調整します。まるで生き物を育てるように、窯と対話しながら作業を進めました。
そして、ついにその時がやってきました。窯から立ち上る煙の色が、灰色の煙から、次第に青みがかった透明な煙に変わっていきます。これは、窯の中が炭化しているサイン。「青白い煙が出たら、窯の口を閉じる」という最終局面を迎え、小さな空気穴を残し、火入れの作業が終了しました。
そして、窯が冷めるのを数日待ち、ついに蓋を開ける時が来ました。
ドキドキしながら覗き込むと、そこには…!
見事な黒色に輝く、美しい木炭が並んでいました!
手に取ると重くて、叩くと「キンッ」と高い金属音が響きます。これが、良質な木炭の証。炭素の結晶だけが残る、我々が求めていた「最高の相棒」が、ついに目の前に現れたのです。
最高の木炭と、最高のジビエとの出会い
苦労して作ったこの木炭で、さっそく猪肉を焼いてみました。
火をつけると、市販の炭では感じられなかった穏やかな炎が立ち上り、煙もほとんど出ません。
遠赤外線効果のおかげか、肉の表面はあっという間に香ばしく焼き固められ、中は驚くほどしっとりジューシーな状態を保っています。一口食べると、炭の香りが猪肉の繊細な風味を邪魔することなく、むしろ引き立てているのが分かります。肉の旨味、そして、ほんのりと香る炭のスモーキーな香りが、口の中で見事に調和する。
これは、私が探し求めていた「究極のジビエの味」でした。
最高の肉は、最高の火によって、さらにその輝きを増す。
私たちのジビエ探求の旅は、まだまだ続きます。
今回の炭焼きは、炭窯の温度を上げ過ぎたことで、20%の樫の木が燃え尽きて、灰になっていました。1時間毎の温度を計測したので、次回は温度管理を改善し、歩留まり率50%を目指します。
このブログで、これからも我々の狩猟生活と炭焼きの挑戦を発信していきますので、どうぞお楽しみに!