痛恨の反省「OM-30型に瑕疵なし、原因は足切れだった」

Categorised in: ,

ブリット野口です。

前回、新たな猟場で体験したイノシシの罠抜け事案について、当初は「掘り返しと浅い掛かりで足が抜けた」と推測し、記事を作成しました。しかし、その後、現場を検証すると、この推測は完全に誤りだったことが判明しました。真実は、「足が千切れて逃走していた」という残酷なものでした。
<前回の記事>
罠抜けの恐怖!「イノシシが掘り返した後の現場に残されたメッセージとは?」


さらに、切れた足を詳しく確認した結果、「ワイヤーは副蹄より上に深く掛かっていたこと」が判明。OM-30型に瑕疵は一切なく、問題はすべて、獲物の持つ破壊力と、安全対策の目的に対する私の「認識不足」にあったという、真実を突きつけました。

今回、この「足が抜けない深い掛かり」と「自損による断脚」という事実に焦点を当て、猟師の倫理と今後の対策について深く考察します。

誤認の根源「獲物の持つ破壊力」
1. OM-30型は「深く」掛かっていた
今回使用したオリモ製作所のOM-30型は、沈下荷重の設定ができないという制約があるにもかかわらず、獲物を副蹄より上の、狙うべき正しい位置に深く掛かっていました。OM-30型は、くくり罠として、獲物を正しく捕獲する役割を果たしたのです。

2. 断脚の真実「自損行為と締付防止金具」
問題は、深く掛かったワイヤーによる拘束を、イノシシが自らの本能的な破壊行動で打ち破ろうとした点にあります。
<自損行為の加速>
法令が定める締付防止金具の目的は、錯誤捕獲の場合、輪が締まりきっても、獲物を殺傷せずに保護することにあります。しかし、イノシシの持つ強い生命力と破壊力の前では、この安全措置は役に立ちませんでした。イノシシは数時間にわたり、足を抜けない状態で、掘り返し、跳躍、突進という自損行為を続行しました。この激しい抵抗が、ワイヤーの輪と足首の間で断続的で破壊的な摩擦を生み出し続けました。

その結果、足首の組織は、ワイヤーによる外部からの圧迫というよりも、イノシシ自身が加え続けた過剰な負荷とねじれによって破壊され、疲労断裂に至ったのです。これは、OM-30型の構造的な瑕疵ではなく、獲物が持つ野生の破壊力が、私の予想を遥かに超えていたことを示しています。

逃げたイノシシの今後の行動予測
最も重要なのは、この足を犠牲にして逃げたイノシシが、今後、その猟場にどのような影響を与えるのか?

1. 短期的な行動(数日〜数週間)
<極度の隠遁と負傷の回復>
逃走直後、イノシシは激痛と出血で消耗し、生存本能から最も安全で人目につかない場所(深いヤブ、岩陰など)に潜伏します。食事や移動を最低限に抑え、傷の回復に専念します。
<縄張りの一時放棄>
捕獲された場所周辺の広大なエリアを極度の危険地帯と認識し、一時的に元の行動ルートや餌場を避けるようになります。

2. 中期的な行動(数週間〜数ヶ月)
<スレた個体の誕生>
このイノシシは、生半可な罠では二度と捕まらない「罠抜けの達人」となります。地面のわずかな違和感、掘り返しの痕跡、人の匂いなど、すべての捕獲の兆候に対し、異常な警戒心を示すようになります。
<身体能力の限界と新たなルート>
足を失ったことで、移動速度、掘削能力、そして、緊急時の逃走能力が大きく低下します。安全を確保するため、今まで使わなかった、より隠密性が高く、傾斜の少ないルートを開拓し、行動パターンが大きく変わります。

3. 長期的な行動(数ヶ月以降)
<凶暴化と人里への接近リスク>
罠と人間に起因する極度のトラウマは、このイノシシを予測不可能な、より凶暴な個体に変える可能性があります。さらに、身体能力が低下することで、山での餌の確保が難しくなり、農地や人里へ下りてくるリスクが跳ね上がります。これは、単なる捕獲の課題を超え、地域住民の安全に関わる大きな問題となります。

猟師の責任と今後の誓い「設置する場所の限定」
今回の事故は、「生け捕り」を目的とする猟師にとって、自身の安全と獲物への配慮が不可分であることを示しています。
➀潜んでいたリスク
もし、自ら足を千切るほどの激痛と興奮状態にあるイノシシに、私が生け捕りのための保定作業を試みていたら、その予測不能な攻撃により、重傷を負っていた可能性は極めて高かったでしょう。今回の「イノシシの足切れ」が、私の見回りや作業と重なり、「猟師の負傷事故にならなくて本当によかった」と、心から自戒の念を覚えます。
➁設置する場所の限定と工夫の徹底
OM-30型を使い続ける際は、その特性を補うために、罠を設置する場所を厳しく限定します。
➂限定的な設置場所の選定
獲物が踏み込んだ足を深く突き入れやすい崖などの急斜面や、狭く岩がちで掘り返しが難しい場所に限定して罠を設置します。これにより、深い掛かりを確実にするとともに、掘削による自損行為を物理的に防ぐ工夫をします。
➃暴れさせない環境づくり
近くに太い木や岩などの動かせない障害物がある場所を選び、ワイヤーが動く範囲を制限し、暴れることによるねじれや摩擦の集中を防ぎます。

この悲劇を二度と繰り返さないよう、今回の断脚事故を重く受け止め、獲物の苦痛を最小限に抑えるという猟師の倫理に基づいた行動を徹底して参ります。

Tags: