猟師が考える「くくり罠」の魅力とは?

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ブリット野口です。

一期一会の対話が始まる瞬間
狩猟と聞くと、多くの人は銃を構える姿を想像するかもしれない。しかし、私が心惹かれるのは、獲物を傷つけずに生け捕りにするくくり罠を使った罠猟だ。
この方法には、銃猟とは全く異なる奥深さと、獲物との間に生まれる特別な「対話」がある。今回、私がくくり罠猟で感じる、言葉にできないほどの魅力を紹介したい。

くくり罠とは?
まず、簡単に説明すると、くくり罠とは、獲物が仕掛けられたワイヤーを踏むと輪が締まり、足をくくる仕組みの罠である。銃のように即座に命を奪うのではなく、生きたまま捕獲することを目的としている。獲物と直接対峙するわけではないため、「待ち」の時間が非常に長く、その分、自然との一体感を強く感じられることが特徴だ。

獲物との一期一会
くくり罠猟は、まさに「一期一会」である。仕掛けた罠が、どの獲物を、どのタイミングで捉えるかは、神のみぞ知る世界。獲物の足跡や行動パターンを読み解き、知恵を絞って罠を仕掛けるが、それでも、結果はやってみないとわからない。だからこそ、罠を確認しに行く朝は、いつも胸が高鳴る。

山道を登り、罠の場所にそっと近づく。そして、ワイヤーの先に獲物がいるのを見つけたときの感動は、何度経験しても色褪せない。

獲物の体重や足跡から、それがどんな個体なのか、想像をしながら仕掛けた罠に獲物が掛かり、実際に目の前にしたときに、「ああ、お前だったのか」という感覚は、言葉にできないほど感慨深いものである。

猟師の想像力と知識が試される
くくり罠猟は、単に罠を仕掛けるだけではない。獲物がなぜ、その場所を通るのか?何を食べ、どこで水を飲み、どこで眠るのか?

その全てを徹底的に観察し、獲物の思考をトレースする必要がある。地面に残された足跡、掘り返された土、木にこすりつけられた痕跡…。これら一つ一つが、獲物からのメッセージなのだ。

「この先には食べ物があるから、この道を通るだろう」「きっとこの窪地で水を飲むに違いない」といった仮説を立て、罠を仕掛ける。そして、罠に獲物がかからなければ、その仮説は間違っていたということになる。

「なぜ失敗したのか?」「獲物はなぜ違う道を選んだのか?」再び、仮説を立て挑戦する。この試行錯誤のプロセスこそが、くくり罠猟の最大の魅力である。

命と向き合う責任
生け捕りにした獲物を目の前にすると、私の心は様々な感情で満たされる。そこには喜びだけでなく、命をいただくことへの感謝、そして、言葉にならない重みが伴う。

猪は非常に賢く、獰猛な動物だ。だからこそ、彼らと対峙する際には、最大限の敬意と、安全を確保するための冷静さが求めらる。

捕獲後、私はいつも「ありがとう」と心の中で語りかける。それは、獲物への感謝の気持ちであり、この命を無駄にしないという自分自身への誓いである。この瞬間こそが、私が自然の一部であることを強く感じさせ、生きている実感も感じさせてくれる。

くくり罠が教えてくれること
くくり罠による狩猟は、私に多くのことを教えてくれた。それは、単に獲物を捕る技術ではなく、自然への深い理解と敬意である。
➀忍耐力
獲物がかかるまで、ひたすら待ち、観察する。結果を急がず、焦らない姿勢。
➁観察力
地面に残されたわずかな痕跡から、獲物の行動を読み解く力。
➂想像力
獲物の視点に立ち、その行動を予測する力。
➃感謝の心
命をいただくことへの深い感謝と、責任感。

狩猟の世界に足を踏み入れたことで、自然の中で感性が育まれ、私の日常生活にも影響を及ぼしている。

まとめ
くくり罠猟は、銃猟のようなダイナミックさはない。しかし、その静けさの中には、獲物と猟師が織りなす繊細な「対話」が存在する。それは、自然の懐に深く入り込み、その鼓動を感じる特別な時間なのだ。

もし、あなたが狩猟に興味を持ったなら、ぜひ、この静かで奥深い世界を覗いてみて欲しい。そこには、きっと想像以上の感動が待っている。

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