厳冬の猪を獲る!厳木の若手猟師が語る1月〜2月の「罠の設置場所」
ブリット野口です。
唐津市厳木町で、くくり罠猟を始めて5年目の猟期に入りました。ベテラン猟師から見れば、まだまだひよっこですが、この4年間、山に入り、失敗を重ねながらも、少しずつ猪の習性を読めるようになってきました。
12月から2月にかけて、気温が下がり、餌が少ない厳木の山では、猪の動きがとてもシビアになります。この時期、猪の行動は極端にシンプルです。彼らは生き残るための最低限の動きしかしません。罠を仕掛ける場所も、秋と同じ考え方では全く獲れません。しかし、その行動原理を理解すれば、ルートは絞り込めます。
ベテラン猟師からの教え、そして、私自身の失敗から学んだ、厳冬期に効果的な「罠の設置」に関する仮説を皆さんに共有したいと思います。
1. 飢餓回避ルート「わずかな餌に繋がる最短経路」
この時期の山は、ほぼ食料が枯渇しています。猪にとって、最も重要なのは秋に地中に埋もれた高カロリーのドングリを掘り出すこと。そして、それに匹敵するのは、農地の残渣を狙うことです。彼らは、無駄な体力を使いたくない。従って、餌がある場所への最短距離を選びます。
設置仮説①
<ドングリの「掘り跡エリア」を避けた出口>
秋の間にドングリが豊富だった山で、猪が鼻で掘り返した痕(採食痕)が集中している場所があります。そこに罠を仕掛けても、彼らは立ち止まって餌を探しているため、なかなか踏み込んでくれません。狙うべきは、その「採食エリアを抜けた先」です。
<ポイント>
広範囲の掘り跡が一段落し、次の山や谷、または農地へと移動するために合流する尾根筋の幹線ルート。特に、岩や倒木などで道幅が狭くなっている隘路(あいろ)は、猪が回避せずに必ず通るため、捕獲率が上がることくを経験上、感じています。
2. 「冷え込み回避」ルート「陽だまりの茂みへの出入り口」
厳木の冬は冷えます。猪も寒さで体力を消耗したくない。彼らは暖をとるための「安全なねぐら」への出入りをルーティン化します。
設置仮説②
<南向き斜面にある「ねぐら」の確実な入り口>
猪が選ぶねぐらは、風が当たらず、日中に太陽の光を浴びやすい南向き斜面の常緑樹の茂みが多いです。夜間に採食活動を終え、「夜明け前〜朝」にかけて、この休息地へ戻るルートは、他の時間帯より警戒心が緩む「帰り道」になることが多いです。
<ポイント>
人間が入りにくい、常緑樹が密生した茂みの、外へ向かって伸びる唯一の道。足跡が集中し、道がはっきりしている場所に設置します。朝方、疲れて急いで帰りたい猪は、細い道でも立ち止まらずに歩いてくれる可能性が高いです。
3. 「命懸けの採食」ルート「農地侵入の固定ルート」
山に餌が尽きた猪にとって、畑のサツマイモの残渣やミカンの残りは命を繋ぐ貴重なごちそうです。私の経験では、この時期の農作物の被害は、飢餓が原因で発生しているケースが多いです。
設置仮説③
<畑の「潜り込み口」から山側のルート>
イノシシは頭が良く、一度畑に入れた場所を忘れません。特に、電気柵が完璧でない場合、沢を横切る部分や、地面との隙間から必ず侵入します。
<ポイント>
まず、畑を徹底的に巡回し、猪が潜り込んだ形跡のある「侵入口」を特定する。その潜り込み口から畑と反対側、つまり、山に向かって少し遡った、けもの道の上に罠を仕掛ける。理由は、畑のすぐ側は警戒されるリスクが高いですが、満腹になって山へ帰る際の「帰り道」は、少し気が緩んでいます。侵入口から罠を数メートル離すことで、より自然な状態で踏み込ませることができます。
4. 「繁殖本能」ルート「山をまたぐオスの移動路」
12月から1月は、猪の発情期です。特に、大型のオスはメスを探して、広範囲を移動するため、この時期に獲れる猪は、メスを巡る闘争で傷ついた立派なオスであることが多いです。
設置仮説④
<複数の沢を結ぶ「尾根筋の獣道」>
オスが広域を移動する際に利用するのは、複数のメスの群れがいるエリアを効率よく巡回するための尾根筋です。
<ポイント>
複数の谷筋が集まる山頂付近の稜線を走る、しっかりと踏み固められたメインのけもの道。このルートは、単に餌を探すだけでなく、繁殖という強い本能で動いている個体を狙うため、捕獲のチャンスが増えます。
まとめ
この4年間、厳木の山で学んだのは、「猪はいつもエネルギー効率を考えている」ということです。猪は、無駄な動きをしないので、必ず通らざるを得ない「要所」に罠を仕掛けることが、冬の猟の成功の鍵だと確信しています。
雪や凍結で罠の性能が落ちやすい時期ですが、安全に配慮して山に入りましょう。私の経験が少しでも皆さんの役に立てば幸いです。
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