ブリットハンティングクラブが考える「厳木ジビエツーリズム」とは?
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ブリット野口です。
佐賀県唐津市厳木町。深い緑に包まれたこの町で、既存の狩猟の常識に真っ向から戦いを挑む二人の男がいる。一人は、佐賀市で自転車屋を営む店主であり、罠猟師として5年のキャリアを持つ私。 もう一人は、有田のレストランで雇われ料理人として腕を振るい、自らも狩猟免許を保持する私の同級生だ。
本業を持つ我々が、なぜ敢えて茨の道を選び、彼の自宅横にある「元弁当屋」を拠点とした『厳木ジビエ研究所』を立ち上げたのか。そして、その先に見据える『厳木ジビエツーリズム』という壮大な実証実験の全貌を、ここに記したい。
1.現場の「輸送」が品質を決定する
「ジビエは臭い」 世間に蔓延するその先入観は、現場における「怠慢」が生んだ誤解に過ぎない。獲物が罠にかかった瞬間から、肉質劣化という名のカウントダウンは始まっているのだ。私は自転車屋としての技術とプライドをかけ、独自の搬送システムを構築した。それが、「電動アシスト自転車とサイクルトレーラー」による運搬技術である。
エンジン音というノイズを排除し、猪を興奮させぬまま、山から引き剥がす。そして、自宅に運び、車両のヒッチメンバーに装着された「カーゴキャリア」へと積み替える。このスタイルには、二つの合理的な裏付けがある。
第一に、獲物を車外に積載することで、車内へのマダニ感染を物理的に遮断すること。衛生管理こそが、食品を扱う者の絶対的な正義だ。 第二に、カーゴキャリアの取付位置を低く設計することで、重量物の積載を物理的に省力化すること。メカニックとしての論理的思考が、素材の鮮度を極限まで引き上げる「ロジスティクス」を実現させたのである。
2.「元弁当屋」という名の最前線基地
猪が運び込まれる先は、かつて、地域に食を提供し続けた「元弁当屋」。現在は、料理人である同級生の自宅に隣接する、我々の「研究所(ラボ)」だ。生け捕りにこだわって運ばれた猪を、食のプロである彼が、一切の無駄なく仕留め、放血させる。心臓が動いているうちに血を抜き去る「完全放血」こそが、雑味というノイズを消し去り、肉本来のポテンシャルを覚醒させる唯一の手段だ。
そして、真の勝負はここから始まる。解体された肉は、ラボの熟成庫へ。彼は拠点のすぐ隣に住んでいる。これこそが最大の武器だ。彼は本業の合間を縫い、あるいは、深夜、早朝を問わず、24時間体制で肉の熟成(エイジング)を監視し続ける。「肉が完成する瞬間」を逃さない、徹底した品質管理が、そこにはある。
3.「厳木ジビエツーリズム」地域経済への挑戦
我々の目的は、単なる趣味の延長ではない。これは、厳木町の資産を再定義するための、真剣な実証実験だ。害獣として忌み嫌われてきた猪を、この町が誇るべき「一級の食材」へと昇華させる。自転車屋の私がフィールドワークを統括し、料理人の彼が最高の一皿を供する。この「厳木ジビエツーリズム」という仕組みが機能すれば、放置された山々は資源の宝庫へと変貌を遂げるはずだ。
4.逆転のジビエ
「地方の自転車屋と雇われ料理人に何ができる」
そう冷笑する者もいるかもしれない。だが、現場を知り、技術を磨き、誰よりもこの町の可能性を信じているのは我々だ。
命を預かる猟師として、命を磨き上げる料理人として、 かつて、弁当が地域の胃袋を支えたその場所から、今度は厳木の誇りを地域住民へ届ける。「厳木ジビエ研究所」は、まだ歩き出したばかりだ。 しかし、我々の手元には、最高の素材と、それを支える確かな技術、そして、何より「本物」を追求する情熱がある。
5.今後の展望
現在、研究所ではツーリズムの鍵となる「長期熟成肉」のデータ蓄積を急ピッチで進めている。厳木の未来を賭けたこの戦い、是非とも見届けていただきたい。
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