捕獲ゼロから学ぶくくり罠猟の戦略「10月と11月の経験から導く12月の猪捕獲術」
ブリット野口です。
狩猟を愛する皆さん、今年の猟果はいかがでしょうか?
私は、佐賀県唐津市厳木町で、くくり罠一本、痕跡の分析とルート読みで、イノシシ猟に取り組んでいます。
イノシシの移動経路と生活痕跡を読み解き、罠を仕掛ける戦略を採用しています。10月に5頭を捕獲したものの、11月に入りパタリと獲物が途絶えるという、厳しい試練に直面しました。
なぜ、急に捕獲できなくなったのか?
そして、この経験を12月の極寒期にどう活かすのか?
今回は、イノシシの行動パターンと環境変化に基づく「狩猟の戦略と課題」をテーマに、2025年12月以降の捕獲を成功させるための具体的な仮説と対策を徹底解説します。
序章「10月の成功と11月の停滞、その要因を分析する」
1. 10月「成功」の裏側「資源集中によるルートの定型化」
10月に5頭も捕獲できたのは、罠の場所がイノシシの最も重要な自然の移動ルート上にあったことを証明しています。
<要因>
10月はドングリなどの自然の食物が豊富で、イノシシはこれを求めて特定の場所に集中的に移動し、ルート利用が定型的になっていたため。
<捕獲理由>
罠が高頻度利用される定型的な移動ルートに仕掛けられていたため。
2. 11月「停滞」の真実「警戒心とルートの分散・放棄」
11月の捕獲ゼロは、以下の二つの要因による「ルートの変更と分散」が主な要因です。
<要因①>「学習と警戒心(ルート放棄)」
5頭の仲間が捕獲されたことで、残りの群れは、その捕獲場所を通っていた旧ルートを「危険ルート」として完全に放棄し、別の回避ルートや新しい生活圏へ移動しました。
<要因②>「自然の食料の分散」
自然の食料が地表から減少し、広範囲に散らばるようになった結果、イノシシの移動ルートも広範囲に分散し、定型的なルート利用が激減しました。
結論として、11月の課題は「イノシシのルート変更に対応しきれなかった」という点に集約されます。
本題「12月の気象と生態から導く痕跡分析、戦略、仮説」
12月は気温が低下し、イノシシの生理的なニーズ(寒さ回避・水分補給)が高まるため、特定の場所への移動が必然的になります。この必然性を痕跡分析で裏付け、戦略を立てます。
1. 12月のイノシシの行動予測と痕跡の変化
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項目 |
12月の行動予測 |
発生する痕跡の変化 |
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気温と休息地 |
低温化により体温維持のためのエネルギー消費が増加するため、日中は休息地(寝屋)で過ごす時間が長くなる。 |
休息地周辺の踏み跡や掘り跡が集中し、利用頻度が高くなる。休息地は南〜南東向きの斜面(日当たりが良い)、植生が密な場所(風を遮る)に集中する。 |
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風向きと移動路 |
北西の季節風が強まるため、風当たりを避ける風裏(かぜうら)の斜面や、風を遮る植生の密な尾根筋、谷筋を好んで移動する。 |
風下側の斜面を横断する新しい斜行ルートの踏み跡が増える。古いルートから逸脱した迂回痕跡が明確になる。 |
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食料と採食 |
自然の食物(ドングリなど)が地表から減少し、広範囲に分散するため、採食にかける時間が増えるか、特定の食物が残っている場所への依存度が高まる。 |
広範囲にわたる散発的な掘り跡が見られる一方で、食料が残る場所(例えば、農耕地や特定の樹林帯)周辺で踏み跡が集中する。 |
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水分補給 |
土壌や空気が乾燥し、体温維持でエネルギーを使うため、安定した水源への依存度が高まる。 |
休息地と谷底の沢、湧水地を結ぶ「生活連絡路」の利用頻度が、他の時期よりも高くなる。特に早朝の足跡が目立つ。 |
| 土壌と足跡 |
土壌が乾燥するか、朝霜が降りる日が増える。 |
イノシシの足跡が鮮明に残りやすくなり、ルートの幅や深さ、群れの構成(大型個体と小型個体)の分析が容易になる。踏み分け道の中心線が明確に識別できるようになる。 |
2. 【仮説 A】「寒さ回避ルート」の特定・集中戦略
狩猟成功の生命線は、イノシシが必ず通る「必然ルート」の発見です。
➀ルート探索
南〜南東斜面の風下側にある、日当たりの良い植生の密な尾根筋(鞍部)や、沢沿いを重点的に探索します。これらが新しい生活圏の中心となるため、これらの場所につながるルートを特定する。
➁痕跡の追跡
新しいヌタ場(泥浴び場)や、新しい木のこすり痕など、生活が始まっている痕跡を起点に、そこから延びる踏み跡を丹念に追跡する。
3. 【仮説 B】「生活資源連絡路」の再定義戦略
12月は、イノシシの行動が「休息地」と「水場」の二点間の移動に限定されやすくなります。
➀集中ルート
「休息地 → 水場」休息地の痕跡(寝屋跡、掘り跡など)と、谷底の沢や水源の痕跡を結ぶ、イノシシにとって最も効率的で抵抗の少ないルート(斜面を斜めに横切る道など)を特定し、その上で待ち構えます。
➁罠の集中
10月の捕獲場所から完全に離れた場所(最低500m以上)へ罠を移動させ、利用頻度の高まった生活連絡路の踏み跡上に罠を設置します。
4. 【仮説 C】「足跡と土壌」による精密設置戦略
痕跡分析で勝負する以上、罠の設置精度が決定的に重要です。
➀足跡の活用
12月は土壌が乾燥するか、霜が降りるため、イノシシの正確な通過ルートが非常に読み取りやすい時期です。特に足跡が重なって残り、幅が狭くなっている「幹線ルート」を特定し、その直上に罠を埋設します。
➁踏み分け道の分析
イノシシが群れで利用する踏み分け道は、しばしば、中央が固く、両端が崩れやすくなります。この道の中心線、あるいは、個体が足を置きやすい中央のくぼみを正確に捉えて罠を仕掛けます。
➂罠の清掃徹底
10月〜11月に使った罠は、しばらく土中に埋めるなどして、人間の匂いや獲物の痕跡の匂いを完全に除去します。匂いに対する警戒心をゼロにすることが、この戦略の生命線です。
結論「12月の狩猟は「痕跡分析」で活路を開く」
10月の成功は自然の恩恵、11月の停滞はイノシシの賢さがもたらした課題でした。しかし、12月は、厳しい寒さがイノシシの行動を再び読みやすくしてくれるチャンスです。痕跡分析特化戦略の鍵は、以下の3点に集約されます。
➀古いルートの完全放棄
過去に捕獲のあった場所は、イノシシにとって「危険地帯」として記憶されています。潔く諦め、新しい狩猟圏への移動する。
➁必然ルートの発見
寒さ回避や水場利用といった生理的ニーズが作り出す、南斜面・風裏・水場連絡路といった「必然的に通らざるを得ないルート」を、足跡やこすり痕から特定する。
➂精密な設置と消臭
痕跡が明確な今こそ、罠の無臭化を徹底し、踏み分け道の中心線を正確に捉える精密な罠の設置を心掛ける。
狩猟は、自然との知恵比べであり、絶えず変化する環境への適応力が試されます。
厳木町の冬の山を丹念に歩き、イノシシの残したメッセージを読み解き、戦略的に罠を仕掛け、分析に基づいた行動を実践すれば、必ずや大きな成果をもたらすはずです。
そして、次回のブログでは、この戦略がもたらした 12月の猟果を報告します! ご期待ください。
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