「385万分の1の猪との遭遇」唐津市厳木町の罠猟師が、180日の捕獲データから猪猟を数学的に分析してみた。
ブリット野口です。
私は、佐賀県唐津市厳木町の豊かな自然の中で、自転車店と旅行業を営みながら「二足ならぬ三足のわらじ」で挑む罠猟師です。猟師5年目ともなれば、経験という「勘」が育つ時期ですが、あえて、「データ」を紐解くことで、見えてくる真実を考えてみます。
今シーズンの実績をもとに、数学的な視点から罠猟を分析してみましょう。
罠猟を「確率」でハックする「厳木・猪捕獲分析レポート」
1. 「180日で10頭」から見る日次捕獲率
まず、10月〜3月の180日間で10頭を捕獲した実績を、日単位の確率(時系列)で考えます。
・捕獲確率:10÷180=5.5%
これは「18日間山に通えば1頭獲れる」という計算になります。一見低く見えますが、罠猟は「待ち」の猟。仕事(自転車店・旅行業)をしながらでも、94.5%の「獲れない日」を許容できる仕組みを作れているかどうかが、兼業猟師としての継続の鍵と言えます。
2. 「罠18基」の個別パフォーマンス
次に、仕掛けた罠1基あたりの期待値を算出します。
・1基あたりの捕獲数:10÷18=0.55頭
・1基が1日に獲物を捉える確率: 5.5%÷18=0.3%
1つの罠だけに注目すると、捕獲確率はわずか0.3%。この数字は「いかに罠を1基の点としてではなく、18基の『面』や『線』として機能させるか」の重要性を示しています。
厳木の複雑な地形において、この0.3%を1%に引き上げるための見切り(足跡・ヌタ場・獣道の選定)が、4年目の腕の見せ所です。
3. 面積比から見る「遭遇の絶望的確率」
ここが最も興味深い分析です。猟場を1km四方(1,000,000 ㎡)としたとき、罠が占める面積がいかに微々たるものかを可視化します。
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項目 |
単位・計算 |
数値 |
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猟場の面積 |
1,000m×1,000m |
1,000,000㎡ |
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罠1基の面積 |
12cm×12cm |
0.0144㎡ |
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罠18基の面積 |
0.0144×18 |
0.2592㎡ |
面積比の結論
猟場全体に対する罠の面積比は、なんと約385万分の1 です。
「1km四方の森の中に、広げた新聞紙の半分にも満たない面積を18箇所に散りばめ、そこを猪に踏ませる」
これがデータから見た罠猟の正体です。この絶望的な確率を「180日で10頭」まで引き上げているのは、統計学を超えた「獣の導線を読む知能戦」があるからに他なりません。
4年目のまとめ
データが教える「兼業」の強み
この分析から分かるのは、罠猟は「運」ではなく、猪の行動圏という巨大な分母を、獣道という「線」に絞り込み、さらに踏板という「点」に集約させる情報の圧縮作業であるということです。
自転車の整備も、旅行の行程管理も、そして、罠の設置も、すべては「精度の追求」という点で共通しています。厳木の山をデータと経験で読み解く日々は、まだ始まったばかりです。今後も狩猟を通して見つけた発見を皆さんに共有していきます。
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