「2026年1月の猪猟戦略」気象データから導き出す客観的な予測とは?
ブリット野口です。
はじめに
佐賀県唐津市厳木町本山。かつての炭鉱の記憶を色濃く残すこの地は、ボタ山特有の乾燥した土質と露出する岩盤に覆われ、そして、広葉樹と杉の植林地が複雑に絡み合う、特殊な猟場です。
今シーズン、私はフィールドを歩き、ある確信を得ました。それは、「どんぐりの落果が例年になく遅れた」という事実です。12月は毎日欠かさず猟場へ足を運び、地面を観察し続けました。現場での観察と気象データを重ね合わせ、私の仮説は揺るぎない確信へと昇華しました。
2024年と2025年の比較データを紐解きながら、厳木町本山という特殊なフィールドをいかに攻略すべきか、その仮説を紹介します。
1. 唐津市(アメダス)気象比較表
実測値を比較すると、2025年の11月は降水量が25.5mmと極端に少なく、山の土がコンクリートのように硬くなりました。猪は鼻先で土を掘ってミミズや根っこを食べますが、土が硬いとこれができません。
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月 |
年 |
平均 |
降水量 (mm) |
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気温 (℃) |
最高気温 (℃) |
最低気温 (℃) |
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10月 |
2024 |
21.1 |
25.1 |
18.1 |
143.0 |
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2025 |
21.3 |
25.7 |
18.0 |
75.0 |
|
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11月 |
2024 |
14.9 |
19.0 |
11.5 |
332.5 |
|
2025 |
13.9 |
19.1 |
9.6 |
25.5 |
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12月 |
2024 |
8.1 |
12.1 |
4.4 |
35.5 |
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2025 |
9.7 |
14.7 |
5.2 |
92.5 |
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12月に入り、降水量が前年の約3倍(92.5mm)に急増し、気温も約1.6度高い「暖冬傾向」となりました。これにより、11月にガチガチだったボタ山の土が一気に柔らかくなり、猪にとって最高の「掘り起こし(ラッティング)」環境が1ヶ月遅れで整ったのです。
2. 「落果の遅れ」が猪の心理に与えた影響
「どんぐりが落ちるのが遅かった」という私の観察は、10月の乾燥(75.0mm)と11月の極端な少雨が樹木の水分ストレスを引き起こし、代謝を停滞させた裏付けと言えます。通常、1月は山の上に餌がなくなり、猪は空腹に耐えかねて里へ降ります。しかし、今シーズンは「標高200m付近の雑木林に、12月の雨でようやく落ちた新鮮などんぐりがまだ豊富に残っている」のです。
12月の平均最高気温14.7℃という暖かさは、猪の行動範囲を広げました。12月の捕獲が少なかったのは、彼らが里へ降りる必要がなく、山の上部で「遅れてきた恵み」を享受しながら悠々と過ごしていたからに他なりません。
3. 2026年1月、厳木町本山での「生け捕り」の仮説
このデータに基づき、私は1月の攻略ポイントを以下の3つの仮説に集約しました。
【仮説A】「往復の最短連絡通路」に罠を置く
12月の雨でボタ山の斜面は柔らかくなりましたが、岩盤地帯は依然として歩きにくい。猪はエネルギー効率を考え、最短ルートを選択します。
<ターゲット>
標高150m付近、岩盤のヘリに沿った踏み固められた一本道。
<狙い>
餌場(ボタ山の広葉樹)と水場(沢)を繋ぐ最短路。移動を急ぐ猪の足元への不注意を突きます。
【仮説B】「枯れ沢」の砂溜まりこそが急所
11月の乾燥の影響で、現在も厳木町本山の沢の多くは水流が細いか、表面上は枯れています。
<ターゲット>
枯れ沢の中で、一歩だけ柔らかい砂が溜まっている場所。
<狙い>
地面が硬く締まっている今、猪は無意識に「鼻で探索しやすい柔らかい土」を踏みます。砂溜まりに足を置く確率は昨年以上に高まっています。
【仮説C】杉林の中の「隠れ寝床」からの降り口
気温が下がる1月、猪は風を避け、保温性の高い杉林の奥を寝床にします。
<ターゲット>
杉林から、遅れてどんぐりが落ちた雑木林へ抜ける「植生の切り替わり目」。
<狙い>
寝起きでまだ目が覚めきっていない、無防備な初動の数歩を狙い撃ちます。
4. ボタ山跡の硬い土質を攻略する「技術的対策」
厳木町本山の極度に乾燥した硬い土質と、冷え込みを攻略するための対策です。
① 「砂」による音響遮断術
乾燥した獣道では、石同士の摩擦音が発生しやすい。罠の底に「川砂」を敷き詰め、作動時の音と振動を吸収させます。
② 足場を限定させる「自然のガイド」
猪が移動を急いでいるため、獣道の左右に岩の破片を配置。猪に「ここしか踏めない」という一歩を強制的に作り出し、確実に踏み板の中心を踏ませます。
最後に
「12月は捕獲2頭」という現実は、決して失敗ではありません。毎日、見回りを続け、地表のどんぐりの一粒一粒を観察し続けてきたその時間は、最強の武器へと変わりました。アメダスが示す「前年の1/10という11月の乾燥」と「12月の暖冬」というデータ。そして、自分の足で集めた「どんぐりの落果遅延」という里山の現状。これらの点と点が結びついたとき、1月の猪のルートは鮮明に浮かび上がります。
2026年1月、厳木町本山の猪は、まだ山の上部に未練を残しながら、喉の渇きと寒さに急かされて動いています。
データが導き出す客観的な予測と、泥にまみれて観察した現場の確信。この二つを手に、私は再び厳木町本山の斜面に罠を据えます。 1月の猟は、この執念の仮説から始まります。
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