「狩猟と通勤の融合」自宅ガレージが中継地点となる「命の二段階リレー」
ブリット野口です。
1. 序章「兼業猟師が営む自転車店の日常」
佐賀市鍋島で自転車店を営む私の日常は、他の店主とは少し違います。店を開ける前の午前中、私は猟師へと姿を変えます。
唐津市厳木町にある自宅ガレージには、ロードバイクやマウンテンバイクと並んで、くくり罠、ロープ、そして、特製のサイクルトレーラーを置いています。
私の日常生活は、唐津市厳木町から佐賀市鍋島への移動が伴います。この地理的な制約と中間に存在する小城市の加工所を、最大限に活用するために編み出したのが、独自の「命の二段階リレー搬送」です。
それは、道幅の狭い厳木の山中で捕獲したイノシシの命を、ロープワークとE-MTBによる搬出という手法で自宅ガレージまで運び、そこで積み替えて「通勤ルート」を利用して搬入する、という独自の狩猟スタイルです。
この記事では、独自の狩猟スタイルと、私を支えてくれるパートナーたちとの連携を通じて、最高のジビエが生まれる物語をお届けします。
2. 第一段階「厳木の山中で始まる命のバトン」
私の猟場である厳木町周辺の里山は、車両の乗り入れが難しい狭隘な里山です。
午前中、くくり罠の確認に向かい、イノシシがくくり罠に掛かっているのを見つけると、即座に搬送の準備に入ります。鮮度が命のジビエにおいて、この最初の時間がすべてを決めるからです。
私が生け捕りにこだわる理由は、最高の品質を追求するための時間と場所を確保するためです。山中で処理を急ぐのではなく、衛生的で完璧な設備が整った加工所まで運び込むことで、品質管理の「時間」と「場所」を確保できるのです。
私がイノシシの保定に利用する技術は、ロープワークです。くくり罠に掛かったイノシシに対し、現場では迅速かつ安全な沈静化処置を施します。具体的には、目隠しで視界を遮り興奮を抑え、専門的なロープワークを駆使して、鼻、前足、後足の全てを慎重に固定します。この処置と、ロープワークによる固定は、動物自身の安全と運搬時のストレスを最小限に抑えるための必須工程です。
処置を終えると、私はロープを慎重に使いながら、イノシシを山中からソリで引き出し、E-MTBと連結したサイクルトレーラーに積載します。そして、エンジンの騒音を立てることなく、静かに山道を下り、唐津市厳木町の自宅ガレージまで運び入れます。この一連の作業、すなわち、「ロープワークとE-MTBによる搬出」は、私がMTBレースと里山のトレイル整備で磨いた独自の技術です。
3. 第二段階「ガレージで積み替え、通勤ルートで運ぶ」
E-MTBとサイクルトレーラーによる一次搬送は、厳木の里山の厳しい道程を乗り越え、自宅ガレージへと戻ることで完了します。このガレージこそが、私が設計した「二段階リレー」の要所であり、最終的な中継地点です。私は、ガレージに到着後、くくり罠に掛かっていたイノシシをサイクルトレーラーから、長距離運搬のための専用カーゴキャリアを連結した車両へ速やかに積み替えます。
これは、里山での柔軟な移動と、小城市までの公道移動の安全性を両立させるための、私ならではの工夫です。この積み替えを終えると、私はそのまま小城市にある加工所へと向かいます。これが、佐賀市鍋島の自転車店を開ける前の、私の重要な通勤のルーティーンワークです。
4. 加工所での連携「異国のジビエ職人へ命の受け渡し」
命のバトンは、小城市にある加工所へと運ばれます。ここで待つのは、私の信頼するパートナー、異国の加工技師リンさんです。
リンさんは、私が厳木の山中でロープワークとE-MTBによる搬出という独自の手法で最高の鮮度を確保して運搬する努力を理解し、その努力を無駄にしないプロ意識を持っています。
「あなたが新鮮な状態を保ってくれるおかげで、私の仕事の質も上がる。私の衛生管理と正確な解体技術で、その鮮度を食卓まで届けます。」

加工所では、私が確保した「時間」と「場所」を活かし、人道的かつ迅速な止め刺しと血抜きが、リンさんによって徹底的に清潔な環境下で実施されます。私のガレージから始まった命のバトンは、リンさんのプロ意識と技術によって、最高の安全と品質を纏い、精肉へと昇華するのです。
私はリンさんにイノシシを託した後、そのまま佐賀市鍋島の店舗へ向かい、午後から自転車店を開店します。
5. 命の終着点「厳木町の同級生、ナカシマへの信頼」
最後に、この命の物語を完結させるのは、私が暮らす厳木町の同級生で、自らも狩猟免許を持つシェフのナカシマです。ナカシマは、リンさんが処理した肉を小城市の加工所から仕入れ、厳木町の自宅に隣接した旧飲食店舗を使って、加工を施します。
その場所の名は、「厳木ジビエ研究所」。命の出発点である「厳木の里山」と、最高品質の料理を追求する「研究所」が、同じ地域で繋がっているのです。
「お前の狩猟スタイルには、独自の哲学が詰まっている。生け捕りへのこだわり、加工所での止め刺し、リンさんの技術、すべてが詰まったこの肉を前に、俺も料理人として手を抜くことはできない。」
ナカシマは、その肉の力強さや繊細さを最大限に活かす調理を施します。
ナカシマと一緒に、厳木の旧酒蔵を利用して、狩猟文化を伝えるジビエ食事会を開催したこともあります。地産地消への取り組みも私たちの課題です。
6. 結論「ガレージから生まれた持続可能な未来」
佐賀市鍋島の自転車店主である私のライフスタイルから生まれた「ロープワークとE-MTBによる搬出」を中核とする二段階リレーは、厳木の里山の厳しい現実を克服し、環境負荷を減らしつつ、最高品質のジビエの両立を可能にしました。私が生け捕りにこだわるのは、最高の品質を追求するための時間と場所を確保するためです。
私の生け捕りの技術、リンさんのプロ意識、ナカシマの信頼。この三者の連携こそが、私たちが「いただきます」と口にするジビエに、単なる食材以上の深い物語と感謝の重みを与えているのです。
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