「最終結論と衝撃の真実」足切れの真相は「オスの自損行為」だった

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ブリット野口です。

前回までの記事で、私が経験したくくり罠の事故について、当初の「足が抜けた」という仮説から、現場検証を経て「足が千切れて逃走した(断脚)」という残酷な真実を突き止めました。この事実は、私自身の設置技術と道具の選択に問題があったのではないか?という、深い反省へとつながりました。
<前回の記事>
罠抜けの恐怖!「イノシシが掘り返した後の現場に残されたメッセージとは?」

痛恨の反省「OM-30型に瑕疵なし、原因は足切れだった」

しかし、なぜ、副蹄よりも上に深くワイヤーが掛かり、締付防止金具が機能していたにもかかわらず、断脚という結果に至ったのか?

この疑問を抱え、狩猟期間に宮崎から厳木へ遠征に来るベテラン猟師に相談したところ、一つの衝撃的な指摘を受けました。

<ベテラン猟師の指摘>
「夕方にかかったオスの噛み切り」
私が「足が切れていた」事実を伝えると、ベテラン猟師は冷静に以下の点を指摘しました。
➀時間的な要因
「夕方にかかったイノシシは、翌朝の見回りまでの時間が長いため、パニックと絶望感から自ら足を噛みちぎる可能性が高い」
➁性別と部位の特定
「メスは噛みちぎることは稀だが、オスは特に、強靭な顎と牙を使って拘束された前足を噛み切ることがある。後足は体が大きいため口が届かない。切れるのは、副蹄より上の関節だ。」

「現場の再々検証」
ベテラン猟師の指摘を受け、私は再度、残された足の破片と現場の痕跡を詳細に確認しました。
➀部位の特定
断脚されたのは、ワイヤーがかかっていた前足だった(前足なら口が届く)。
➁切断面の確認
切断された箇所は、まさに副蹄の上の関節、ベテラン猟師が指摘した通りでした。これは、ワイヤーによる摩擦やねじれによる組織の疲労破壊ではなく、鋭利なもの(イノシシの牙)で断ち切られたことを示唆しています。
➂個体の推定
現場の足跡や体毛の分析から、この個体は大型のオスである可能性が高いことが裏付けられました。

この瞬間、私はこれまでのすべての仮説が的外れであったことを悟りました。 OM-30型は獲物を正しく捕らえていた。しかも、その後に起きた断脚は、道具の性能や設置場所の問題ではなく、獲物自身の強烈な生命力と自損行為に起因する、極めて稀な事故だったのです。

<最終結論>
OM-30型に瑕疵はなく、原因は「猟師の認識不足」だった。この「オスの噛み切り」という真実が明らかになったことで、私が最初に立てた「浅いかかり」や「道具の瑕疵」といった仮説は、すべて否定されました。

「噛み切りを許した二重の要因」
① 時間的猶予の提供
拘束から解放されるまでの時間が長すぎたこと。これがパニックと痛みを極限まで高め、自損行為という手段を選ばせました。
② 拘束が「支点」になった
ワイヤーが前足に深くかかり、しっかりと固定された状態(=OM-30型の拘束成功)が、皮肉にもイノシシが顎を使って足を噛み切るための安定した支点を提供していた。これは、OM-30型の構造的な欠陥ではなく、「イノシシの生命力と顎の力、そして猟師の見回り間隔」という、複数の要因が絡み合って発生した事故であり、猟師の危機管理と獲物の生態に対する認識不足が招いた悲劇です。

「噛み切り脱走個体がもたらす最大のリスク」
自ら足を噛み切って脱走したこのオスは、単なる「スレたイノシシ」のレベルを超えた、極めて危険な個体となりました。
➀異常な攻撃性と凶暴化
自分の体を傷つけてでも逃げたという事実は、この個体が極度のトラウマと憎悪を抱いていることを示します。人間に対する警戒心はもちろん、異常な攻撃性や予測不可能性を持って行動する可能性があります。これは、今後の捕獲の難易度を跳ね上げるだけでなく、地域住民の安全リスクを大幅に高めます。
➁設置場所の工夫による対策(OM-30型継続使用の条件
今回の経験から、OM-30型のメリット(設置の容易さ、迅速な作動)を活かしつつ、リスクを最小限に抑えるため、私は以下の通り設置場所を厳しく限定することを誓います。
「足を深く突きやすい場所」への限定
罠を仕掛ける場所は、イノシシが体重をかけ、足を深く踏み込みやすい崖などの急斜面や、狭い獣道に限定します。これにより、ワイヤーが外れにくく、拘束力を最大限に発揮させます。
「掘削困難な環境の選択」
掘り返しによる体力の消耗とパニックの加速を防ぐため、土壌の固い場所や岩がちで掘削が不可能な場所を選びます。

 「猟師の責任」
今回の事故が私に突きつけたのは、「生け捕り作業における猟師自身の負傷リスク」の高さです。もし、自ら足を噛み切るほどの激痛と興奮状態にあるイノシシに、私が見回り中に鎮静処置や保定作業を試みていたら、その予測不能な突進や噛みつきにより、重傷を負っていた可能性は極めて高かったでしょう。

この断脚事故が、私たち猟師の負傷事故にならなくて本当によかったと、心から自戒の念を覚えます。
私は、この教訓を深く胸に刻み、見回りの頻度を上げること、そして、獲物への苦痛と損傷を最小限に抑えるという猟師の倫理に基づいた安全管理を徹底し、今後の猟に臨みます。

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