100日ダイエット「第11回」数字は真実を映すのか

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ブリット野口です。

開業19年目の自転車店主が、最新AIと共に「100日間で5kg減量」に挑むダイエット記録。
第1回:52歳100日ダイエット開始
第2回:心拍と足裏で身体を調律
第3回:AIプロチームの分析
第4回:データで管理する「身体の調律」
第5回:52歳の壁と無意味な疾走
第6回:数字の解釈と職人の違和感
第7回:ものさしの崩壊と真実を掴むための再構築
第8回:効率77%の静寂と数字の矛盾
第9回:解像度の変化と、その先にある静寂
第10回:機械化する肉体と動かぬ体重

100日ダイエットが終わった。3月から始めた3本ローラー中心のトレーニングも一区切りを迎えた。ここまで、体重、体脂肪率、睡眠、心拍、パワー、ケイデンスを記録し続けてきた。3本ローラーの上でペダルを回し、夜はスマートスケールで体重を計測する。

朝になると数字を眺め、変化を確認する。今回は、その100日分のログを月間に集計して並べてみた。AIにも解析させ、相関を探し、改善案を出し、身体の変化を読み解く。数字を積み上げれば、人間の身体も少しずつ見えてくるのではないか。そんな期待があった。しかし、結果は少し予想外だった。数字は増えた。身体も変わった。けれど、答えは見つからなかった。

「100日間のログ」
今回の100日ダイエットは、大きく3つの期間に分かれている。

3月:ベース構築期
<ケイデンス100>
合計巡航時間:6時間00分
実施日数:12日

平均パワー:136.8W
平均心拍:155.4bpm
平均ケイデンス:101.8rpm

<フィジカル>
平均睡眠時間:6時間39分
平均安静時心拍:59.4bpm(55.0~66.0bpm)
平均体重:67.41㎏(61.0~69.0㎏)※3月12~14日の測定エラーまたは特異的な外れ値を含む
平均筋肉量:72.64%(71.2~77.0%)
平均脂肪量:23.11%(18.7~24.7%)

4月:出力引き上げ期
<インターバル5+5>
合計巡航時間:5時間30分
実施日数:11日
平均パワー:142.2W
平均心拍:152.1bpm
平均ケイデンス:99.9rpm

<フィジカル>
平均睡眠時間:5時間47分
平均安静時心拍:58.1bpm(52~63bpm)
平均体重:68.03kg(67.2~68.8㎏)
平均筋肉量:72.45%(71.6~73.2%)
平均脂肪量:23.43%(22.7~24.3%)

5月:高密度追い込み期
<インターバル3+2>
合計巡航時間:5時間00分
実施日数:10日
平均パワー:143.9W
平均心拍:154.0bpm
平均ケイデンス:97.2rpm

<フィジカル>
平均睡眠時間:5時間40分
平均安静時心拍:57.3bpm(50.0~67.0 bpm)
平均体重:68.61kg(67.8~69.4㎏)
平均筋肉量:72.90%(71.2~74.2%)
平均脂肪量:22.95%(21.7~24.2%)

「動かなかった数字」
初日から最終日の数字を比較すると面白い。平均パワーは119.0Wから148.2Wまで上昇した。約29W向上である。ケイデンスは104 rpmから94.1 rpmへ低下した。これは、ただ足を速く回して「心肺の回転数で誤魔化す走り」から、一枚重いギアを筋肉で押し切る走りへ移行したことを意味している。
3月時点では、119Wを維持するだけで、心拍数は159 bpmまで上昇していた。しかし、5月29日は、高強度インターバルを含む30分間でありながら、平均心拍数は146.8 bpmに留まっている。
第10回で書いた「機械化する肉体」は、数字の上でも確かに存在していた。身体は静かに最適化していた。毎朝の退屈な30分は、身体の内部で静かに積み上がっていたのである。

指標 3月2日(ラップ2:ケイデンス100巡航30分) 5月29日(ラップ2~12:インターバル等30分) 差分
平均ケイデンス 104.0 rpm 94.1 rpm -9.9 rpm 低下
平均パワー 119.0 W 148.2W +29.2W 向上
平均心拍数 159.0 bpm 146.8 bpm -12.2 bpm 低下

ところが、もう一つの数字は最後までほとんど動かなかった。100日間を通して、体重は67〜69kg付近を行き来し続けた。体脂肪率も大きくは変わらない。もし、この企画を「体重を落とすダイエット」として採点するなら、決して成功とは言えないだろう。だが、身体能力の指標を見ると話は変わる。出力は向上し、心拍は改善し、疲労耐性も高まった。数字は停滞しているように見える。しかし、身体は変化している。その矛盾が最後まで残った。

指標 3月平均 5月平均 変化
体重 67.41 kg 68.61 kg +1.20 kg
筋肉量 72.64 % 72.90 % +0.26 %
体脂肪率 23.11 % 22.95 % -0.16 %
安静時心拍数 59.4 bpm 57.3 bpm -2.1 bpm
睡眠時間 6時間39分 5時間40分 -59分

「AIは人間を説明できるか」
AIはデータを整理するのが得意だ。今回も複数の仮説を提示してくれた。
筋肉量と脂肪量の相殺。高強度トレーニングによる体内水分量の変化。睡眠不足による回復の遅延。身体組成の再構築。
どれも十分にあり得る説明だった。

しかし、そのどれも決定打ではなかった。
出力は向上した。心拍は低下した。体重は増えた。睡眠時間は減った。すべて事実である。
だが、それらを一本の線で結び、身体の全体像を説明することはできなかった。

「数字は真実を映すのか」
この100日で分かったことがある。数字は嘘をついていない。パワーも、心拍も、体重も、睡眠も、それぞれ正しい。
だが、それぞれが見ているものは違う。
体重は身体の重さを示す。心拍は循環器の負荷を示す。パワーは運動能力の一部を示す。睡眠は回復の状態を示す。
どれも真実だ。しかし、どれも身体の全体像ではない。数字を増やせば増やすほど、人間という存在は単純な方程式では表せなくなっていった。

「終わりに」
100日分のログを解析して分かったこと。身体は思っていたより複雑だった。数字は身体を映している。しかし、それだけで全てを説明できるわけではない。
100日間で大量の数字が残った。だが、最後に残った問いは数字の外側にある。この実験で本当に得たものは何だったのか。
次回、そのことを考えてみたい。

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