酒造りで学んだこと

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ブリット野口です。

10年以上前に酒蔵で3年間働いたことがある。
久しぶりにその酒蔵の前を通ると、屋根から蒸気が上がっていた。本格的に酒造りが始まっている証拠だ。洗った米を甑で蒸しているはずだ。

「酒造りは赤子を育てるようなもの」
「蒸米」が始まると、約3ヶ月間、酒造りは休みなく続く。基本的に分業制で各工程の担当者は違う。しかし、私が働いた小さな酒蔵では、洗米、蒸米、醪・仕込み、上槽・搾り、濾過、瓶詰など、製麹以外を担当した。肥前町のベテラン蔵人と一緒に、予定された一日の作業を淡々と繰り返す。酒造りは水仕事がほとんど。その都度、道具の除菌と掃除を繰り返す。特に全国新酒艦評会に出品する大吟醸は各工程に細心の注意を払う。そして、仕込んだ後、タンクで醪を発酵させていくのだが、低温で発酵させていくためには、温度管理が重要となる。検温、櫂入れ(細長い棒でかき混ぜる作業)を朝晩行い、発酵の状態を確認し、温めたり、氷で冷やしたり、温度を調整する日々が続く。その後、仕込むタンクの数だけ同じ工程を繰り返すことになる。

「和醸良酒」
和醸良酒とは「酒造りに携わる人、酒を瓶詰する人、酒を販売する人、そして酒を飲む人、それぞれの和の精神を大切にしてこそ、美味しい酒が生まれる」という考え方。
「人間は自分ひとりでは生きていくことはできないので自分を支えてくれる多くの人たちとの和を大切に生きていくこと」という教え。
私自身も多くの人に支えられ、商売を続けている。しかし、酒造りで学んだ「和」を忘れることが多々あるので気を付けたい。
搾りが始まると杉玉が吊るされ、3月頃には各酒蔵で平成最後の蔵開きが開催される。

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