里山サイクリング「東多久」肥前狛犬巡り
ブリット野口です。
「地域資源を巡る里山サイクリングの可能性」
地域資源を活用したサイクルガイドツアーとして、里山サイクリング「肥前狛犬巡り」の旅行商品化に取り組んでいる。
今回、東多久ルートを開拓したので、オペレーションの確認と参加者の反応を見るため、モニターツアーを実施した。
参加者の年齢は45~70歳。歴史を学ぶサイクルガイドツアーに興味を持つ人の年齢は高くなる傾向のため、適度な休憩を挟みながら、新緑がまぶしい多久市内を自転車で巡った。
「肥前狛犬と肥前鳥居の魅力」
約600年前の江戸時代に佐賀で流行った「肥前狛犬と肥前鳥居」は約150年で消滅した。その後、石工の技術が進歩し、現代の大きな鳥居や狛犬の姿に変化している。肥前狛犬は小さな祠や神社の片隅で風化した姿で残っていることが多く、私自身、約100体の肥前狛犬を自転車で巡っている。近年は肥前狛犬の盗難が増え、本殿に格納されることが多くなっている。
肥前狛犬を巡るサイクルガイドツアーを開催する場合、神社や祠を管轄する区長にその旨を伝え、地域から合意を得ることを心掛けている。
「200年近く続く酒蔵も地域資源の一部」
今回のモニターツアーの目玉は、東多久の東鶴酒造で酒蔵を見学させてもらうこと。午前の仕込みが終わり、午後の洗米までの準備時間に蔵を案内してもらった。
東鶴酒造は、江戸時代後期の天保元年(1830年)に創業した老舗蔵で、長年にわたり地元の人々に愛飲される酒を造ってきた。しかし、日本酒の需要低迷のあおりを受け、平成に入る頃から酒造りがあまり行われなくなり、いつしか休業状態になった。
蔵を復活させたのは、先代当主の長男で、現6代目当主の野中保斉氏である。当初は日本酒が好きではなく、蔵を継ぐ気もなかったという。野中氏は知人に紹介された佐賀県唐津市の小松酒造の日本酒を飲んだところ、その味わいに感銘を受け、「自分も旨い日本酒を造りたい」という想いが高まり、酒造りを始めた。
野中氏の酒造りに対するこだわりは「伝統と革新」であり、こだわりの根底にあるのは「昔ながらのいい部分を継承しながら、自分たちで新しいことに挑戦していく」という想いである。
ちなみに、私は自転車屋を開業する前に小松酒蔵に勤務していた。酒造りの労働環境の厳しさを経験している。東鶴酒造では空調設備が整った搾り機や温度管理ができる仕込室など、設備投資が進んでいて、バランスの良い「伝統と革新」を感じることができた。
今回、里山サイクリングに酒蔵見学を組み込んだのは、私自身が酒造りのことを理解しているので、野中氏から深い話を聞けると考えたからだ。
<参考記事>酒造りで学んだこと
大半の参加者は初体験の酒蔵見学だったが、私を含めた3名は酒蔵勤務の経験があり、野中氏と話が弾み、予定していた見学時間をオーバーしてしまった。
参加者に地元にある美味しい日本酒を伝えることは、酒造りを経験したガイドの役割でもある。今後はサイクルガイドツアーに酒蔵見学を組み込んでいきたい。
「コースプロファイル」
距離:20km、移動:2時間、肥前狛犬見学:1時間、酒蔵見学:1時間、ランチ:1時間