【唐津市相知町】肥前狛犬を巡る里山サイクリング:「蕨野棚田」を自転車で巡るガイドツアー
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ブリット野口です。
地域の文化遺産である「肥前狛犬」を自転車で巡る体験を私たちは「里山サイクリング」と呼んでいます。
「肥前狛犬」とは、主に佐賀・福岡・長崎で作られ、神殿の中に大切に祀られてきた小型の狛犬です。
現在の唐獅子型の狛犬とは異なり、拝殿を向いて置かれているなど独自の文化を持っていますが、小さな祠や屋外の肥前狛犬は風化や盗難の被害に晒されているのが現状です。

こうした文化財を守り、日々手を入れているのは地域の方々です。里山の暮らしに触れると、人と里と山の多面的な繋がりが見えてきます。
【1. サイクルツーリズムで最も重要な「地域との合意形成」】
観光客がほとんど訪れない里山でサイクルツーリズム(自転車観光)を定着させるには、地域住民との信頼関係と合意形成が欠かせません。
私たちは、地区の会議での丁寧な説明や、地域イベントへの出店を通じて「自転車によるツアー」を身近に感じてもらう活動を続けてきました。
特に蕨野地区では、地域おこし協力隊との連携が深まったことで、調整が非常に円滑に進みました。
ツアー造成から1年。稲刈りを終えた農閑期の蕨野棚田にて、モニターツアーを開催しました。
【2. 事前レクチャーとE-BIKE(電動アシスト自転車)の科学的メリット】
標高130mの棚田交流広場から、標高350mの大平展望台までは距離3km、高低差200mの激坂コースです。

ツアーの開始前には、15分間の事前レクチャーを取り入れました。ただ現場を見るだけでなく、「肥前狛犬」や「里山」の定義をあらかじめ知識として頭に入れてもらうことで、現地での理解度と満足度が劇的に上がります。

また、一般自転車と電動アシスト自転車(E-BIKE)の「運動効率の違い」についても解説しました。
一般自転車と比較して、電動アシスト自転車は消費エネルギーが約20%少ないとされています。
体力を温存できるため、急勾配の坂道で圧倒的な効果を発揮します。
<コースプロファイル>
距離:24km、走行時間:2時間、見学:1時間、ランチ:1時間、消費カロリー:500kcal
唐津市厳木町を起点に3か所の肥前狛犬を巡り、相知町の蕨野へ。
厳木・相知地区の石造物文化は、松浦党の影響を受けています。

獅子城を右手に眺めながら浪瀬峠を越え、蕨野の入口へと向かいます。
【3. 「和らびの」のランチと絶景の大平展望台ヒルクライム】
手打蕎麦と棚田米のおにぎりが美味しい「和らびの」でランチを楽しんだ後、蕨野の棚田を一望できる大平展望台までのヒルクライムに挑戦しました。

現在、和らびのは、営業していませんが、棚田米は交流広場ので販売しています。

高齢化、過疎化が進む蕨野地区は、棚田も耕作放棄地へと変化しています。

交流広場から展望台までの「距離3km・高低差200m」は、初心者には厳しい上り坂ですが、電動アシストの力を借りることでギリギリ乗り越えられる絶妙な負荷になります。

参加された60代の女性も、一度も足を付くことなく約20分で上り切ることができました。
「自分の脚で登り切った」という達成感と、眼下に広がる美しい棚田の風景は、ヒルクライム最高の褒め言葉(ご褒美)です。
体力差をカバーし、誰もが同じ景色を楽しめることこそが、E-BIKEを活用したサイクリングツアー最大のメリットです。
【4. 日本一の高積!蕨野棚田を支える「石積と地下暗渠システム」】
展望台から棚田全体を俯瞰した後は、南川原にある「日本一の高積の棚田」へ向かいます。
このエリアは道路が非常に狭いため、観光目的の車両通行は禁止されています。しかし、歩行者や農作業の邪魔にならない自転車であれば通行可能であること、そして、農閑期の管理ガイドツアーとして運用することを地域住民と話し合い、通行の合意を得ています。
蕨野棚田の最大の魅力は、その美しい景観だけでなく「独特の水利システム」にあります。
一般的な棚田では、上段の田んぼから溢れた水を下段へ流す「田越し(たごし)」という配水方法が多く見られます。しかし蕨野では、田んぼの地下に築かれた「石積の暗渠(あんきょ)」を通して配水しています。

大平地区では、湧水や大平川の石堰から取水した水が地下の暗渠を通り、畦畔(けいはん)の石垣に開けられた大きな横穴から湧き出ます。その下の竪穴(たてあな)へ流れる仕組みになっており、田んぼに水を引きたい時だけ横穴にパイプを差し込んで取水します。
この精巧なシステムのメリットは以下の通りです。
・冷たい水が田んぼに直接入らず水温低下を防げる
・大雨増水時でも田んぼの安全な水量を一定に保てる
・水路を地下化(暗渠化)することで、限られた土地を少しでも多く田んぼとして活用できる
また、石垣の法面(のりめん)は玄武岩を使った「野面積(のづらづみ)」で築かれており、下から見上げるとまるで山城の石垣のような壮大さです。
蕨野からわずか1kmほどの場所にある「獅子城」の石垣建設技術が伝承されたとも言われています。
【5. おわりに:唐津アドベンチャートラベルへの展開】
地元に残る肥前狛犬の価値を伝えるために始まった「肥前狛犬巡り」ですが、現在は「里山」×「サイクリング・ハンティング(狩猟)・トレッキング」を掛け合わせた「唐津アドベンチャートラベル」として再編集を進めています。

メジャーな観光地ではない唐津市南部ですが、ローカルガイドの深い視点で案内する体験型ツアーには独自の価値があります。

地域の歴史や自然文化を掘り起こし、地域住民と信頼で結ばれるこの取り組みは、ガイドである私自身にとっても素晴らしいリスキリング(学び直し)の機会となっています。
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①【佐賀市鍋島】肥前狛犬を巡る里山サイクリング:里山を自転車で巡るサイクルツーリズムの可能性
②【唐津市厳木町】肥前狛犬を巡る里山サイクリング:里山の旧道を自転車で巡るサイクルツーリズム
③【唐津市相知町】肥前狛犬を巡る里山サイクリング:歴史遺産とサイクルツーリズムの可能性
④【佐賀市諸富】肥前狛犬を巡る里山サイクリング:路地裏を走ることで見えてくる佐賀の歴史と暮らし
⑤【小城市小城町】肥前狛犬を巡る里山サイクリング:歴史資源×電動アシスト自転車で楽しむガイドツアー
⑥【多久市東多久町】肥前狛犬を巡る里山サイクリング:地域資源を組み合わせるサイクルツーリズムの可能性
⑦【唐津市相知町】肥前狛犬を巡る里山サイクリング:石積の絶景「蕨野棚田」を自転車で巡るガイドツアー
⑧【番外編】肥前狛犬巡りはこうして始まった:10年間ルートを探し続けた共同開拓者の物語
編集後記
この記事は2年前に公開した記録をもとに再編集したものです。当時の考えや現地での体験はそのままに、現在の視点で読みやすく構成し直しました。試行錯誤の過程も、このブログの大切な記録として残しています。
Tags: アドベンチャートラベル, 肥前狛犬, 里山サイクリング, 電動アシスト