第3話|厳木へ、鬼の鼻山へ。MTBで広がった仲間とフィールド|山は変わらない、私たちの「遊び方」が変わっただけ ~七山・鬼の鼻山・厳木をつなぐ20年の循環記~ | 自転車のことなら佐賀市鍋島のサイクルショップブリットへ

第3話|厳木へ、鬼の鼻山へ。MTBで広がった仲間とフィールド|山は変わらない、私たちの「遊び方」が変わっただけ ~七山・鬼の鼻山・厳木をつなぐ20年の循環記~

Categorised in: ,

山は変わらない、私たちの「遊び方」が変わっただけ ~七山・鬼の鼻山・厳木をつなぐ20年の循環記~

第3話|厳木へ、鬼の鼻山へ。MTBで広がった仲間とフィールド
「走る人」から「迎える人」になると、山の見え方は変わるのか?

ブリット野口です。

2010年に七山で始まったトレイルづくりは、私たちに「遊び場は自分たちでつくるもの」という考え方を教えてくれました。
数年間、仲間とスコップや鋸を手に山へ通い、マウンテンバイクで走るためのフィールドを整えてきました。
しかし、その活動を続ける中で、私たちの遊び場は少しずつ広がっていきます。
2015年、活動のフィールドは七山から私が暮らす厳木へ。そして、2017年には、多久市・鬼の鼻山で開催されるMTB大会に関わることになります。
今振り返ると、この二つの出来事が、私たちの「遊び方」を大きく変える転機でした。

七山から厳木へ、新しいフィールドが始まる
七山でのトレイルづくりは、山を走る楽しさを教えてくれました。一方で、厳木の山には違った魅力がありました。
そこには炭鉱の古い作業道が残り、崩れた炭窯があり、人の暮らしと山が近い距離でつながっていました。
マウンテンバイクで走ることは変わりません。けれど、目に入るものは少しずつ変わっていきます。
地形。森の姿。昔から使われてきた道。地域の歴史。
以前なら見過ごしていた景色が、自然と気になるようになっていました。当時は、その変化に大きな意味があるとは思っていませんでした。
ただ「この山には面白いものがたくさんある」。そんな感覚でフィールドを歩いていました。

MTB大会で知った「迎える側」の視点
2017年になると、私たちは多久市・鬼の鼻山で開催されるMTB大会に関わるようになります。
それまでの私は、一人の参加者として大会を楽しむ立場でした。しかし、この大会では運営側として関わることになります。
ここで初めて知ったのは、「大会は走る人だけでは成り立たない」という当たり前の事実でした。

コースは走るためだけにつくるものではない
大会前にはコース整備を行います。安全管理もあります。コーステープを張り、雨が降れば排水を考え、参加者が安心して楽しめる環境を整える。
私たちが考えることは、自分が速く走ることではありません。
「初めて来た人が、安全に笑顔で帰れるか。」
その視点が中心になっていました。
七山でトレイルを作っていた頃は、「自分たちが楽しく走れるコース」が目標でした。
鬼の鼻山では、「誰かを迎えるフィールド」を整えることが仕事になります。
同じ山でも、立場が変わるだけで見える景色はまったく違いました。

BULLITT CYCLING CLUBが目指していたもの
BULLITT CYCLING CLUBは、単なる走行会を楽しむだけではありません。
スポーツバイクの操作技術を学び、安全に楽しむこと。
そして、地域の人たちにスポーツバイクの魅力を知ってもらうこと。
この二つを大切に活動してきました。
そのため活動内容もさまざまです。パンプトラック。トレイルライド。ロードバイク。インドアトレーニング。
そして、トレイル造成や林道の草刈り、不法投棄の監視など、地域と関わる活動も続けてきました。
速く走ることだけが目的ではありません。
「フィールドがあるから遊べる。」
そのことを、私たちは少しずつ学んでいったのです。

当時は気づかなかったこと
厳木で山を走り、鬼の鼻山で大会を支え、地域の人と話をする機会が増える。
その一つ一つは、当時の私には別々の出来事に見えていました。けれど、今振り返ると、すべて一本の線でつながっています。
「走る」ことから始まった遊びが、「迎える」ことへ変わっていたのです。
この視点の変化が、後に里山そのものへ目を向けるきっかけになりました。

現在だから見えること
山は、自分だけが楽しむ場所ではありません。仲間がいて、地域があって、多くの人が関わることでフィールドは維持されます。
大会運営を経験したことで、「誰かが整えてくれているから走れる」という当たり前のことを実感しました。その経験は、後に森林整備や狩猟、炭焼きへと活動が広がる土台になっていきます。もちろん、この頃はまだそんな未来を想像していませんでした。ただ、自転車に乗り続けていたら、自然と山との関わり方が変わっていったのです。

今回の気づき
七山では「遊ぶ場所をつくる」ことを学びました。
厳木では「山そのものを見る」ことを覚えました。
鬼の鼻山では「人を迎えるフィールドを整える」ことを知りました。
遊び方が変わると、山の見え方も変わります。そして、その変化は次の一歩につながっていきます。

次回予告
厳木の山へ通い続けるうちに、私たちは少しずつ違和感を覚えるようになります。
倒木が増えた森。狭くなる林道。掘り返された地面。同じ場所に10年通い続けたからこそ見えてきた、小さな変化です。

次回、第4話「10年通った厳木の里山で見えた『かすかな息切れ』」へ続きます。

このシリーズを続けて読む
『山は変わらない、私たちの「遊び方」が変わっただけ』は、自転車店の活動から始まった20年間の記録です。
トレイルづくり、MTB大会、里山の変化、狩猟、炭焼き、ジビエ、そして「里山ラボ」へ。
ひとつひとつの出来事がどのようにつながり、現在の活動へ発展してきたのかを、全8話で時系列にまとめています。
第1話|なぜ自転車店を始めたのか
第2話|七山でトレイルをつくった理由
第3話|厳木へ広がったフィールド
第4話|山が発していたSOS
第5話|遊ぶ側から守る側へ
第6話|猟師の樫炭という挑戦
第7話|一皿に宿る里山の循環
第8話|里山ラボという答え

Tags: