佐賀市の挑戦、電動キックボード実証実験を徹底比較!2024年から2025年で何が変わった?
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ブリット野口です。
佐賀市が中心市街地の回遊性向上と地域活性化を目指して導入を進めている小型モビリティ、特に電動キックボードの実証実験は、年を追うごとにその内容を深化させています。
SAGAアリーナの開業や、SAGA2024(国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会)を契機とした来訪者の増加を背景に、2024年にBRJ株式会社が実施した実験から、2025年に佐賀市が主体となって実施する社会実証まで、その進化のポイントを徹底比較します。
2024年の実験では、佐賀駅周辺に10台を配備し、まずは電動キックボードのニーズと利便性を検証する「導入段階」の性質が強かったと言えます。
2025年の社会実証は、期間が約1ヶ月延長され、配備台数は倍の20台に増強されました。
これは、地域交通における小型モビリティの役割について、より包括的かつ長期的なデータを集め、本格導入の可否を判断しようという市の強い意志の表れです。ポートの設置場所も「佐賀駅を中心とした2~3km程度のエリア」へと広がり、より広範囲での回遊性検証が期待されます。
「安全性」への徹底的なこだわりとモビリティの多様化
両実験を比較する上で最も注目すべき変化は、導入機材の多様化と安全性への配慮です。
2024年実験では、プロバスケットボールチーム「佐賀バルーナーズ」との連携による体験乗車会などを通じて安全啓発に努めていました。
2025年の社会実証では、機材として通常の2輪タイプだけでなく、安定感のある3輪タイプの特定小型原動機付自転車(特定小型原付)が10台導入されます。
電動キックボードの課題として常に挙げられる「安全性」に対し、物理的な安定性を高めた車両を検証することで、多様な市民が利用できるモビリティとしての有効性と課題を詳細に洗い出す狙いがあります。
走行ルールについても、2025年の社会実証では「歩道走行モードへの切替不可」が明記されており、特定小型原付の新しい交通ルールを遵守しつつ、利用者に車道左側端の走行を徹底させることで、安全な運行オペレーションの確立を目指しています。
より緻密になった「利用体系」と検証項目
利用料金体系と検証項目にも、経験に基づく進化が見られます。
2024年の料金体系は「30分ごと300円」という、比較的シンプルな時間貸しが中心でした。
2025年の料金体系は「基本料金50円+15円/分」という従量課金モデルが採用されています。
これは、短距離移動やチョイ乗り需要を取り込みつつ、利用時間に応じた公平な課金を可能にする、よりシェアリングサービスに適したモデルです。さらに「2時間500円」のパック料金も設定されており、SAGAアリーナから中心市街地での観光や食事を楽しむような、「移動+滞在」を伴う回遊行動を促す設計になっていることが伺えます。また、検証項目も深化しています。2025年の実証実験では、単なる利用回数だけでなく、「交通行動の変化」「事業の採算性」という、地域交通の課題解決とビジネスとしての持続可能性に踏み込んだ検証が明確に掲げられています。
佐賀市の未来交通への期待
2024年の実証実験は、佐賀市が小型モビリティの可能性を「試す」ステップでした。その結果を踏まえ、2025年の社会実証は、安全性の高いモビリティの導入、きめ細やかな料金体系、そして、持続可能な事業モデルの検証へと、「本格的な導入」を見据えた具体的なステップへと移行しています。SAGAアリーナ周辺の利便性向上から、佐賀市全体の回遊性向上と交通空白地域の解消へ。佐賀市がこの2度の実証実験を通じて得られるデータは、日本の地方都市における「人流創出型モビリティ」の未来を形作る重要な一歩となるでしょう。
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