データから読み解く、唐津市のイノシシ有害駆除【第1話】唐津市で捕獲されたイノシシ2,176頭を分析。まず見えてきた全体像

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データから読み解く、唐津市のイノシシ有害駆除
【第一話】唐津市で捕獲されたイノシシ2,176頭を分析。まず見えてきた全体像

ブリット野口です。

近年、全国の中山間地域ではイノシシによる農作物被害や生活圏への出没が深刻な課題となっています。佐賀県唐津市も例外ではありません。広大な山林と里山を抱えるこの地域では、有害鳥獣対策は農業を守るだけでなく、地域の暮らしや安全を維持するために欠かせない取り組みとなっています。

今回、唐津市で公開されている令和7年度(11月〜6月)のイノシシ有害捕獲記録を一頭ずつ集計・分析したところ、市内では2,176頭のイノシシが捕獲されていました。また、令和8年4月1日時点では、193人の有害鳥獣捕獲従事者が登録されています。

数字だけを見ると、「2,176頭も捕獲された」という印象を受けます。しかし、一頭ごとの捕獲記録を詳しく分析すると、そこから見えてくるのは単なる捕獲頭数ではありません。

どの猟具で、どのような大きさのイノシシを捕獲しているのか。
その傾向を読み解くことで、唐津市の鳥獣害対策が、地域の実情に合わせて組み立てられていることが見えてきました。
本記事では、まず、唐津市全体の捕獲状況を俯瞰し、次回以降の中編・後編につながる全体像を整理していきます。

約8割を占める「箱わな」が捕獲の主役

捕獲猟具 捕獲頭数 構成比
箱わな 1,811 83.2%
くくりわな 242 11.1%
銃器 123 5.7%
合計 2,176 100%

【表1】唐津市 猟具別捕獲頭数・構成比(総捕獲数 2,176頭)

まず、捕獲方法全体を見てみます。
2,176頭のうち、1,811頭(83.2%)が、箱わなによる捕獲でした。約5頭に4頭が箱わなで捕獲されている計算になります。
一方で、くくりわなは242頭(11.1%)、銃器は123頭(5.7%)でした。
この数字から分かるのは、唐津市では箱わなが有害駆除の中心的な役割を担っているということです。
箱わなは、安全性が高く、集落周辺や農地の近くでも比較的運用しやすい猟具です。また、一度に複数頭を捕獲できることも多く、個体数を効率よく減らすことができます。しかし、残り約17%は箱わな以外の方法で捕獲されています。つまり、唐津市では「箱わなだけ」で対応しているのではなく、状況に応じて複数の猟具を使い分けていることが、この時点ですでに分かります。

捕獲されるイノシシの半数以上は20kg以下

体重区分 捕獲頭数 構成比
1〜20kg 1,262 58.0%
21〜40kg 526 24.2%
41〜60kg 240 11.0%
61〜80kg 95 4.4%
81〜100kg 39 1.8%
101〜120kg 11 0.5%
合計 2,176 100.0%

【表2】体重別捕獲頭数(唐津市全体・総捕獲数2,176頭)

続いて、捕獲されたイノシシを体重別に見てみます。
最も多かったのは、20kg以下の小型個体で1,262頭。全体の約58%を占めています。
次いで、21〜40kg:526頭、41〜60kg:240頭、61〜80kg:95頭、81〜100kg:39頭、101〜120kg:11頭という結果になりました。
イノシシというと、80kgや100kgを超える大物をイメージする方も多いかもしれません。しかし実際には、捕獲される個体の多くは20kg以下の幼獣や若齢個体です。これは、被害が発生した個体だけを捕獲するのではなく、将来的な個体数の増加を抑えるための捕獲も重要な役割となっていることを示しています。
一方で、60kgを超える大型個体も145頭確認されており、100kgを超える個体も11頭捕獲されています。
唐津市の有害駆除は、小型個体から大型個体まで幅広く対応していることが分かります。

イノシシの大きさによって捕獲方法は変わる

捕獲猟具 1〜20kg 21〜40kg 41〜60kg 61〜80kg 81〜100kg 101〜120kg 合計
箱わな 1,207 405 145 41 11 2 1,811
くくりわな 37 81 63 35 17 9 242
銃器 18 40 32 19 11 3 123
合計 1,262 526 240 95 39 11 2,176

【表2】体重別・猟具別捕獲頭数(唐津市全体)

さらに興味深いのが、体重と猟具の関係です。20kg以下では、ほとんどの個体が箱わなによって捕獲されています。しかし、体重が大きくなるにつれて、くくりわなや銃器による捕獲の割合が少しずつ増えていきます。これは偶然ではありません。
イノシシは成長するにつれて警戒心が強くなり、行動範囲も広がります。大型個体になると箱わなに入りにくくなるため、獣道を利用したくくりわなや、機動力を生かした銃器による捕獲が必要になる場面も増えてきます。つまり、唐津市ではイノシシの成長段階や行動特性に合わせて、猟具を使い分けていることがデータから読み取れます。

データは「役割分担」を示している
回の集計で印象的だったのは、それぞれの猟具が競い合っているのではなく、異なる役割を担っているということです。
箱わなは捕獲数の約8割を占め、市全体の個体数を抑える中心的な役割を果たしています。
一方、くくりわなや銃器は捕獲数こそ多くありませんが、箱わなでは対応しにくい個体や状況を補う役割を担っていることがうかがえます。
捕獲数だけを見ると箱わなが圧倒的ですが、それだけで鳥獣害対策が成り立っているわけではありません。
異なる特徴を持つ猟具を組み合わせることで、多様な状況に対応していることが、今回のデータから見えてきました。

数字の先にある「地域ごとの違い」
今回、紹介したのは、あくまで唐津市全体の傾向です。しかし、一頭ごとの捕獲記録を地域別に分析すると、市内すべてが同じような捕獲方法ではないことが分かります。ある地域では箱わなが圧倒的に多く使われ、別の地域では銃器による捕獲が半数近くを占めます。また、大型個体の捕獲が多い地域もあれば、小型個体を重点的に捕獲している地域もあります。
同じ唐津市でも、地形や農地の広がり、集落との距離など、それぞれの環境に合わせた捕獲戦略が採られているのです。
こうした違いは、市全体の集計だけでは見えてきません。
地域ごとのデータを比較することで初めて、その特徴が浮かび上がってきます。

まとめ
今回、分析した2,176頭の捕獲データから見えてきたのは、「どれだけ捕獲したか」という数字だけではありませんでした。
唐津市では、箱わな・くくりわな・銃器という三つの猟具を組み合わせ、小型から大型まで幅広い個体に対応する鳥獣害対策が行われています。
そして、その背景には、地域の実情やイノシシの行動に合わせて猟具を使い分ける現場の判断があります。
数字を読み解くことで見えてくるのは、単なる捕獲実績ではなく、地域の暮らしを守るために積み重ねられてきた知恵と技術です。

次回の第二話では、1,811頭の箱わな、242頭のくくりわな、123頭の銃器をそれぞれ詳しく分析し、「どの猟具が、どのようなイノシシを、どのような場面で捕獲しているのか」をデータから読み解いていきます。

シリーズ一覧|データから読み解く、唐津市のイノシシ有害駆除【全4話】
第1話 唐津市で捕獲されたイノシシ2,176頭を分析。まず見えてきた全体像
第2話 箱わな・くくりわな・銃器を比較。猟具ごとに見える捕獲戦略の違い
第3話 地域によって猪は違う。旧唐津・相知・厳木・七山から見える捕獲の特徴
第4話 データは「次の猪」を教えてくれる。厳木の猟師が2026年シーズンを予測する

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