データから読み解く、唐津市のイノシシ有害駆除【第4話】データは「次の猪」を教えてくれる。厳木の猟師が2026年シーズンを予測する

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データから読み解く、唐津市のイノシシ有害駆除
【第4話】データは「次の猪」を教えてくれる。厳木の猟師が2026年シーズンを予測する

ブリット野口です。

はじめに
第1話では、唐津市が初めて公表したイノシシ捕獲データから、2,176頭の捕獲実績を分析しました。
第2話では、「箱わな」「くくりわな」「銃器」という猟具ごとの特徴を整理しました。
第3話では、旧唐津・相知・厳木・七山など地域ごとの違いを比較し、同じ唐津市でも捕獲傾向が大きく異なることを確認しました。

そして、最終回となる今回は、私自身が活動する厳木町に視点を移します。ここからは、公表されているデータと、私が保管している過去10年間の捕獲記録を重ね合わせながら、2026年11月から始まる次の狩猟シーズンについて、一人の猟師として考えてみたいと思います。この記事は行政による予測ではありません。データを読み続けてきた現場の猟師としての、一つの仮説です。

厳木町では何が起きているのか
私が記録している厳木町の捕獲頭数は次のとおりです。

この表を見ると、2021年以降は年間400〜500頭前後の捕獲が続いていました。しかし、令和7年度(2025年2月〜2026年1月)の捕獲頭数は128頭。過去10年間の中でも突出して少ない数字となっています。もちろん、この数字だけで「猪が激減した」と断定することはできません。狩猟者数や捕獲努力量、餌資源、気象条件など、捕獲頭数には様々な要因が影響します。しかし、「これまでと同じ状況ではない」という変化が起きていることは、この数字から読み取ることができます。

豚熱は厳木にも到達した
佐賀県が公表している野生イノシシ豚熱陽性個体のデータを見ると、感染は唐津市西部から徐々に東へ広がっています。令和6年には肥前町や玄海町を中心に陽性個体が確認され、その後、北波多、鏡、相知方面へ拡大しました。

そして、令和7年10月には、厳木町広川で初めて豚熱陽性個体が確認されています。その後も七山や佐賀市北部、神埼方面へと陽性確認地点は移動しており、感染が山系に沿って広がっている様子がうかがえます。

捕獲頭数との関係はあるのか
ここで気になるのが、捕獲頭数との関係です。厳木町では令和7年度に捕獲頭数が大きく減少しました。一方で、その時期に豚熱陽性個体も確認されています。この二つは関係しているのでしょうか。現時点では、断定することはできません。捕獲頭数だけでは、実際の生息数を正確に示しているとは言えないからです。また、豚熱だけが捕獲数減少の原因とも言えません。但し、「捕獲頭数が大きく減少したこと」「同じ時期に豚熱が確認されたこと」この二つの事実は残っています。そのため、「何らかの影響があった可能性がある」という仮説は、今後検証していく価値があると考えています。

唐津市全体ではまだ比較できない
今回、唐津市は初めて地域別・猟具別の詳細な捕獲データを公表しました。しかし、過去の同じ形式のデータは存在しません。つまり、「肥前町では増えているのか」「鎮西町では減っているのか」「豚熱によって捕獲数がどう変化したのか」といった比較は、現時点ではできません。データがない以上、推測だけで結論を出すべきではないと思っています。だからこそ、今回の記事では、事実として公表されている数字だけを整理し、その先は仮説として区別して考えています。

2026年シーズン、私が注目していること
2026年11月、新しい狩猟シーズンが始まります。私が注目しているのは、単純な捕獲頭数ではありません。注目したいのは、「子イノシシの出現状況」「捕獲される体重構成」「捕獲地点の変化」「豚熱陽性確認地点との位置関係」です。

もし、豚熱が個体群に影響を与えているのであれば、捕獲される年齢構成や地域分布にも変化が現れる可能性があります。逆に、大きな変化が見られなければ、別の要因を考える必要があります。今年のシーズンは、そうした仮説を現場で確かめる一年になると思っています。

データだけでは山は読めない
私は鳥獣保護管理員として山に入り、猟師として猪を追い、自転車店では日々「移動」に関わる仕事をしています。

だからこそ思うのは、「数字だけでは山は読めない」しかし、「数字がなければ変化にも気付けない」ということです。
行政の統計。現場の記録。山を歩いた感覚。
そのすべてを重ね合わせて初めて、次の一歩が見えてきます。

おわりに
今回の4回シリーズでは、唐津市が初めて公表した捕獲データをもとに、第1話:唐津市全体の捕獲状況、第2話:猟具ごとの特徴、第3話:地域ごとの違い、第4話:厳木町から考える2026年シーズン、という流れで分析してきました。

今回、まとめた内容は、あくまで現時点で公開されているデータから読み取れる事実と、一人の猟師としての仮説です。2026年11月から始まる新しい狩猟シーズンで、この仮説がどう変わるのか。私はこれからも捕獲記録を取り続け、現場で感じた変化をデータとともに記録していきます。数字は過去を整理するためだけのものではありません。次の山を考えるための地図でもある。そう信じて、今年も山へ入ろうと思います。

シリーズ一覧|データから読み解く、唐津市のイノシシ有害駆除【全4話】
第1話 唐津市で捕獲されたイノシシ2,176頭を分析。まず見えてきた全体像
第2話 箱わな・くくりわな・銃器を比較。猟具ごとに見える捕獲戦略の違い
第3話 地域によって猪は違う。旧唐津・相知・厳木・七山から見える捕獲の特徴
第4話 データは「次の猪」を教えてくれる。厳木の猟師が2026年シーズンを予測する

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