データから読み解く、唐津市のイノシシ有害駆除【第2話】箱わな・くくりわな・銃器を比較。猟具ごとに見える捕獲戦略の違い

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データから読み解く、唐津市のイノシシ有害駆除
【第2話】箱わな・くくりわな・銃器を比較。猟具ごとに見える捕獲戦略の違い

ブリット野口です。

第一話では、唐津市で捕獲された2,176頭のイノシシを分析し、全体の約83%が箱わなで捕獲されていることや、捕獲される個体の半数以上が20kg以下であることをご紹介しました。しかし、「箱わなが多い」という数字だけでは、唐津市の鳥獣害対策は理解できません。一頭ごとの捕獲記録を詳しく分析すると、箱わな・くくりわな・銃器には、それぞれ異なる役割があることが見えてきます。
今回は、猟具ごとの捕獲データを比較しながら、それぞれがどのような場面で力を発揮しているのかを読み解いていきます。

箱わな: 個体数を抑える「主力」

地区 1〜20kg 21〜40kg 41〜60kg 61〜80kg 81〜100kg 101〜120kg 合計
旧唐津 352 125 45 18 7 1 548
鎮西 272 65 10 3 0 0 350
肥前 205 70 20 5 0 0 300
浜玉 98 32 15 4 1 1 151
七山 86 15 27 8 3 0 139
厳木 50 41 10 1 0 0 102
北波多 68 24 8 1 0 0 101
相知 40 18 9 0 0 0 67
呼子 36 15 1 1 0 0 53
合計 1,207 405 145 41 11 2 1,811

【表4】箱わな 地域別・体重別捕獲頭数集計表(総捕獲数1,811頭)

唐津市で最も活躍している猟具が箱わなです。2,176頭のうち1,811頭、実に約83%を占めています。体重別に見ると、20kg以下の小型個体だけで1,207頭。箱わな全体の約3分の2を占めています。この数字から分かるのは、箱わなの最大の役割は幼獣や若齢個体を効率よく捕獲し、地域全体の個体数を抑えることです。イノシシは母親を中心とした群れで行動するため、親子がまとまって箱わなに入ることも珍しくありません。一度の捕獲で複数頭を捕獲できることは、他の猟具にはない大きな特徴です。もちろん大型個体も捕獲されています。
今回の集計では80kg以上が13頭、100kgを超える個体も2頭確認されました。しかし、全体から見ればごく少数です。箱わなの役割は「大型を狙うこと」ではなく、地域全体の個体数を着実に減らしていくことにあると言えるでしょう。

地域によって異なる箱わなの運用
箱わなは市内すべての地域で使われていますが、その役割には違いがあります。
旧唐津では548頭を捕獲し、市内最多の実績となりました。鎮西や肥前でも300頭を超える捕獲があり、小型個体の割合が非常に高くなっています。
一方で、七山では41〜60kg以上の割合が比較的高く、山間部ならではの特徴が見られます。
つまり、同じ箱わなでも「幼獣を効率よく捕獲する地域」と「中・大型個体にも対応する地域」があり、地域の環境によって運用方法が異なっていることが分かります。

くくりわな:大型個体を狙う「専門職」

地区 1〜20kg 21〜40kg 41〜60kg 61〜80kg 81〜100kg 101〜120kg 合計
旧唐津 19 42 33 15 10 5 124
鎮西 9 11 9 5 4 3 41
肥前 7 20 6 3 0 0 36
浜玉 0 3 9 2 1 0 15
北波多 0 3 1 4 1 0 9
呼子 1 1 0 2 1 1 6
厳木 1 1 2 0 0 0 4
相知 0 0 0 4 0 0 4
七山 0 0 3 0 0 0 3
合計 37 81 63 35 17 9 242

【表5】くくりわな 地域別・体重別捕獲頭数集計表(総捕獲数242頭)

くくりわなの捕獲数は242頭。全体では約11%ですが、数字以上に重要な役割を担っています。体重別に見ると、20kg以下は37頭しかありません。一方で、41kg以上になると124頭。つまり、捕獲された個体の半数以上が中・大型個体です。
箱わなでは、警戒して入らない個体や、獣道を単独で移動する成獣に対して、くくりわなが威力を発揮していることが分かります。特に、101kgを超える超大型個体は9頭。箱わなでは2頭しか確認されていないことを考えると、大型個体への対応力は際立っています。

「設置する技術」が成果を左右する猟具
くくりわなは、箱わなのように広い入口へ誘導する猟具ではありません。獣道を読み、足の置き場所を予測し、数センチ単位で設置位置を調整する必要があります。そのため、設置場所の選定や経験が結果を大きく左右します。
地域別に見ると、旧唐津だけで124頭、鎮西41頭、肥前36頭。これらの地域では、くくりわなが大型個体対策として定着していることが読み取れます。

銃器:機動力で補完する最後の一手

地区 1〜20kg 21〜40kg 41〜60kg 61〜80kg 81〜100kg 101〜120kg 合計
相知 18 15 22 13 1 0 69
旧唐津 0 14 5 5 2 0 26
七山 8 11 0 0 0 0 19
北波多 0 2 2 2 0 0 6
厳木 0 1 1 1 0 0 3
浜玉 0 0 0 0 0 0 0
肥前 0 0 0 0 0 0 0
鎮西 0 0 0 0 0 0 0
呼子 0 0 0 0 0 0 0
合計 26 43 30 21 3 0 123

【表6】銃器 地域別・体重別捕獲頭数集計表(総捕獲数123頭)

銃器による捕獲は123頭。全体の約6%に過ぎません。しかし、この数字だけでは銃器の重要性は分かりません。
特徴的なのは、相知町だけで69頭が捕獲されていることです。市全体の銃器捕獲の半数以上が相知町に集中しています。また、41kg以上の中・大型個体は54頭。全体の約44%を占めています。箱わなやくくりわなで対応が難しい個体に対し、銃器が重要な役割を果たしていることが分かります。

「数が少ない=重要ではない」ではない
捕獲数だけを見ると、箱わな:1,811頭、くくりわな:242頭、銃器:123頭となります。しかし、この数字だけで優劣を付けることはできません。
もし、箱わなしかなければ、警戒心の強い大型個体への対応は難しくなります。逆に、銃器だけでは幼獣を効率よく減らすことはできません。くくりわなもまた、その中間を埋める重要な役割を担っています。つまり、三つの猟具は競争しているのではなく、それぞれが得意分野を持ちながら、お互いを補完しているのです。

データが示したのは「役割分担」という戦略
今回、分析した2,176頭のデータから見えてきたのは、猟具ごとの明確な役割分担でした。
「箱わな」は、地域全体の個体数を抑える主力。「くくりわな」は、警戒心の強い中・大型個体に対応する専門的な猟具。「銃器」は、機動力を生かし、罠では対応が難しい個体を補完する手段。
どれか一つが優れているのではなく、それぞれが異なる役割を担うことで、唐津市全体の鳥獣害対策が成り立っています。

次回予告
ここまで見てきたのは、猟具ごとの特徴です。しかし、さらに地域別に分析すると、もう一つ興味深い事実が浮かび上がってきます。
箱わなが9割を占める地域。銃器による捕獲が半数近くに達する地域。大型個体への対応を重視する地域。幼獣の群れを重点的に捕獲する地域。同じ唐津市でありながら、その戦略は大きく異なっていました。第三話では、地域ごとの捕獲データを比較しながら、「地形が変われば、捕獲方法も変わる」という唐津市の鳥獣害対策の実像を読み解いていきます。

シリーズ一覧|データから読み解く、唐津市のイノシシ有害駆除【全4話】
第1話 唐津市で捕獲されたイノシシ2,176頭を分析。まず見えてきた全体像
第2話 箱わな・くくりわな・銃器を比較。猟具ごとに見える捕獲戦略の違い
第3話 地域によって猪は違う。旧唐津・相知・厳木・七山から見える捕獲の特徴
第4話 データは「次の猪」を教えてくれる。厳木の猟師が2026年シーズンを予測する

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