「ツール・ド・九州2026佐賀」再募集の裏側にある大会運営の布陣 【ツール・ド・九州2026検証⑤】 | 自転車のことなら佐賀市鍋島のサイクルショップブリットへ

「ツール・ド・九州2026佐賀」再募集の裏側にある大会運営の布陣 【ツール・ド・九州2026検証⑤】

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ブリット野口です。

【本記事に関する注意書き】
本記事の内容は、公表された「ツール・ド・九州2026」のコース情報、福岡県および佐賀県の各仕様書、および再募集に伴う変更点の比較から導き出した独自の仮説である。特定の企業や団体の内情を断定するものではなく、あくまで一専門家・地元事業者としての視点に基づいた私見であることをあらかじめご了承いただきたい。

5話【ツール・ド・九州2026佐賀】
再募集の裏側にある大会運営の布陣
2026年10月に開催される「ツール・ド・九州2026佐賀ステージ」。波戸岬をスタートし、ルート・グランブルー、唐津城、虹の松原などを経て福岡・天神へ向かうコースが予定されている。唐津の海岸線から福岡まで続く約150kmのルートだ。

このコースを実際の大会として成立させるには、選手が走る道だけでなく、交通、警備、救護、輸送、広報など、さまざまな仕事が必要になる。
4話では、佐賀県が「ツール・ド・九州2026佐賀県開催に係る機運醸成業務委託」の公募を一度取りやめ、内容を見直して再募集したことを書いた。当初の3,000万円から1,500万円へ。当日運営などを含む内容から、広報・機運醸成を中心とした内容へ。参加人数も100名規模から20〜30名程度へ変更された。
この仕様変更を福岡県側の事業と比較してみると、今回の佐賀県の大会運営で、誰がどの仕事を担うのかが少しずつ見えてくる。

1.「全部入り」から、仕事を分ける形へ
当初の佐賀県の仕様書には、広報だけでなく、当日のイベント運営、輸送、警備、救護、ライドイベントなど、かなり幅広い業務が含まれていた。一つの事業者に多くの仕事をまとめて任せる形だ。
一方、福岡県側の事業を見ると、8,500万円という規模の中で、会場設営、救護室の運営、スタッフ配置、交通や輸送など、150kmのレースを支えるための実務が細かく設定されている。同じ「ツール・ド・九州」でも、県によって委託する仕事の範囲は違う。佐賀県が再募集で当日運営を切り離したことを考えると、最初の仕様では一つの事業者に任せる仕事が多すぎた可能性がある。
公募してみた。応募者がいなかった。その結果を受けて、業務を分けた。今回の変更は、単なる予算削減ではなく、「どこまでを一つの事業として委託するのか」を整理したものと見ることができる。これは4話で書いた「現実に合わせた修正」ともつながっている。

2.PRと大会運営を分ける
新しい仕様書では、1,500万円の事業が広報・機運醸成を中心とした内容になった。この変更によって、PRを担当する事業者と、大会当日の運営を担当する事業者を分けやすくなる。ここは大きなポイントだと思う。広報を得意とする会社と、交通や輸送、警備などの大会運営を得意とする会社では、専門分野が違う。すべてを一社に任せるより、それぞれの仕事を分けたほうが動きやすい場合もある。
福岡県側では、西鉄グループの西鉄エージェンシー(NAG)が事業を受託している。交通や輸送など、西鉄グループが持つインフラとのつながりを考えると、福岡側では「広域で大会を運営する体制」が作りやすい。佐賀県側が同じ形をそのまま作れるわけではない。だからこそ、佐賀県はPRと大会運営を分ける方向へ変更したのではないか。
これは仕様書から読み取れる範囲での私の見方だ。少なくとも、最初の仕様書よりも、それぞれの専門性を分けて考えやすい形になった。
なお、半年前の「ツール・ド・九州2026佐賀ステージ(仮)機運醸成委託業務」では、株式会社佐賀広告センターが選定されている。佐賀県には、地元で広報を担う事業者もいる。地元の広報を知る事業者と、大会運営の経験を持つ事業者。それぞれの得意分野をどう組み合わせるのか。ここは今後、見ていきたいところだ。

3.「100人のイベント」から「20〜30人の体験」へ
もう一つの変更が、参加人数だ。旧仕様書では100名規模だった。新仕様書では20〜30名程度になった。人数が減れば、安全管理はやりやすくなる。参加者への案内も細かくできる。コース上でのトラブルにも対応しやすい。広報という面でも、20〜30人程度であれば、参加者の様子を撮影し、SNSやウェブで紹介することができる。新仕様書では、参加者数そのものよりも、SNS発信や事後広報への展開が重視されている。
ここから考えると、今回の企画は「大勢の人に走ってもらうイベント」から、少人数の体験を通して大会や地域を知ってもらう企画へ変わったと考えられる。福岡県では「キャラバン隊」による周知活動も行われている。佐賀県は佐賀県で、別の方法を選んでいる。大会開催前の限られた時間の中で、どうやって唐津を知ってもらうか。その方法を探している段階なのだと思う。

「仕様書の変更」から見えてくること
4話では、公募不調を受けた佐賀県の仕様変更について書いた。5話では、その先を考えてみた。最初は、一つの事業者に多くの仕事を任せる形だった。再募集では、広報・機運醸成を中心に切り出した。参加人数も絞った。自転車レンタルやラッピングバスも必須ではなくなった。一つ一つを見ると小さな変更に見える。全体を並べると、事業者が担当する仕事を整理していることが分かる。
これは大会運営そのものを簡単にしたというより、「誰に、何を任せるのか」を見直したと考えたほうが分かりやすい。

4.イベントは、一つの会社だけでは動かない
ロードレースの大会は、一つの会社だけで作るものではない。主催者がいる。大会運営の専門家がいる。警察や警備関係者がいる。交通事業者がいる。地域の自治体がいる。地元のサイクリング団体がいる。ボランティアも必要になる。さらに、宿泊、飲食、自転車店など、地域の事業者も関わってくる。それぞれが別の仕事を担当する。
今回の仕様書変更を見ていると、佐賀県も「全部を一つにまとめる」より、役割を分けて進める方向へ動いているように見える。経験の少ない地域で国際大会を開催するなら、すべてを自分たちだけで抱える必要はない。経験のある人に聞く。専門の会社に任せる。地元でできることは地元で担う。それぞれの役割を整理する。そのほうが現実的なのだと思う。

5.自転車店主として考える「俯瞰」の大切さ
私自身、これまでガイドツアーを作る中で、行政と一緒に仕事をする機会があった。そこで感じたのは、自分の専門分野だけを見ていても、全体は分からないということだ。自転車のことだけを考えていても、ツアーは成立しない。交通が必要になる。安全管理が必要になる。地域との調整も必要になる。広報も必要になる。行政には行政の役割があり、事業者には事業者の役割がある。今回の仕様書の変更も、その役割分担を見直した結果だと私は考えている。外から見ると「予算が半分になった」という話に見える。中身を見ると、仕事の範囲を整理したことのほうが大きい。

2026年10月、誰が何を担うのか
波戸岬から唐津を走り、福岡・天神へ向かう約150km。この一本のコースを安全に走らせるためには、多くの人の仕事が必要になる。今回の再募集によって、広報・機運醸成については、その役割が少し見えてきた。一方で、当日の大会運営を誰がどのように担うのか。
交通、輸送、警備、救護などをどう組み合わせるのか。
そこはまだ、外から見ている私たちには分からない部分も多い。だからこそ、2026年10月の大会当日が楽しみでもある。仕様書に書かれていることだけでは分からない。実際の現場で、どんな人が動いているのか。どんな仕組みで選手を安全に走らせるのか。唐津の地域がどのように関わるのか。自転車店主として、そこを見てみたい。
今回のツール・ド・九州が、佐賀県にとって最初の大きなロードレース経験になる。その経験が大会当日だけで終わらず、次のサイクルツーリズムにつながっていくのか。そこまで含めて、私はこの大会を追いかけていきたい。

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