サイクルベースあさひ2026年統合報告書分析【第二話】ライフソリューション企業への進化

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決算書には書かれていない「あさひ」の未来 ― 統合報告書2026から見えた、自転車店という仕事の変化

2026年サイクルベースあさひ分析 三部作
①決算書から見える市場の変化
②統合報告書から見える経営戦略
③2030年、地方の自転車店が目指す未来

ブリット野口です。

前回の記事では、サイクルベースあさひ2026年決算を読みながら、「売る時代は終わり始めている」という話を書きました。決算書は、企業の一年間の結果をまとめたものです。売上高。利益。店舗数。投資額。企業の現在地を知るには、とても重要な資料です。
一方で、私が毎年楽しみにしているのが「あさひレポート(統合報告書)」です。ここには数字だけでは見えない、「会社はどこへ向かうのか」という思想が書かれています。今年のレポートを読んで、私は一つのことを強く感じました。
「あさひは、自転車を売る会社を卒業しようとしている。」そんな印象を受けたのです。

「VISION2028」が目指しているもの
今回のレポートでは、新しい中期経営計画「VISION2028」が示されています。
そのゴールは、「持続的な企業成長」と「持続可能な社会への貢献」の両立です。成長戦略として「OMOの深化」「CRMの強化」「周辺事業の拡大」「戦略パートナーの拡大」の4つを掲げ、その土台として「経営基盤強化」「人的資本経営」「サステナビリティ」を据えています。ここで興味深いのは、「販売台数を増やす」とは書いていないことです。目指しているのは、「自転車を中心としたプラットフォーム」なのです。

売上968億円よりも重要だった数字
2028年の目標は、売上高968億円。営業利益85億円。ROE10%以上。あさひ会員850万人。ブランド商品取扱店1,700店舗以上。自転車販売シェア29%という高い目標が掲げられています。もちろん立派な数字です。しかし、私が最も注目したのは別の数字でした。
それは、「国内約6,000万台の保有自転車にアプローチする。」という考え方です。この発想は、「新しい自転車を何台売るか」ではありません。すでに走っている6,000万台と、どう関係を築くか。ここに経営の軸が移っています。

「新車販売依存」からの脱却
さらに驚いたのが、周辺事業の位置付けです。2025年度時点では、売上の96.5%を店舗・ECでの新車・パーツ・サービスが占め、新車販売だけでも68.3%でした。一方、周辺事業は28億円規模ですが、2028年度には74億円まで拡大し、売上構成比を7.5%へ高める計画です。営業利益率も4.8%から8.9%へ向上させる目標が示されています。これは単なる事業拡大ではありません。私は、「新車販売依存から卒業する宣言」だと受け取りました。
リユース。シェアサイクル。パートナー事業。これらを成長ドライバーに据えることで、新車販売だけに頼らない経営へ移ろうとしているのです。

OMOの本当の目的
以前から、あさひはOMOを進めています。しかし、今回のレポートを読むと、目的がさらに明確になっています。
店舗・EC・物流の在庫情報を一元化し、来店・配送・店舗受取をシームレスにつなげることで、お客様一人ひとりに最適な購買体験を提供する。そして、都市型店舗を「接点」として活用し、顧客との関係を深めることを目指しています。
つまり、ECを伸ばしたいのではありません。お客様との接点を増やしたい。そこが本質です。

「フロー型」から「ストック型」へ
今回、一番印象に残った言葉があります。それは、「フロー型からストック型へ」という考え方です。
統合報告書では、新POSや公式アプリ、統合IDを活用し、メンテナンスや修理などのアフターサービスを軸に顧客との長期的な関係を築くことで、「あさひ会員」を850万人以上へ拡大し、新車販売中心のフロー型ビジネスから、長期的な関係性を重視するストック型ビジネスへ転換するとしています。
私は、この一文を読んで納得しました。第1話で感じた「売る時代は終わった。」という印象は、間違っていなかったのです。
売って終わる店ではない。乗り続けてもらう店になる。これが、あさひの描く未来なのでしょう。

地方の自転車店が学ぶべきこと
では、私たち地方の自転車店は、このレポートから何を学べるのでしょうか。
店舗数では勝てません。広告費でも勝てません。しかし、このレポートを読んでいると、大手が目指しているものは「価格競争」ではないことが分かります。
目指しているのは、お客様との関係を長く続けること。安全を支えること。地域の中で必要とされること。それは、実は地方店が昔から大切にしてきたことでもあります。違うのは、規模ではなく仕組みです。だから、私は、このレポートを読んで勇気をもらいました。
地方店は、大手の真似をする必要はありません。自分たちの強みを、もっと磨けばいい。そう思えたのです。

次回、「私は、あさひをライバルだと思わなくなった」
決算書を読んで、市場の変化が見えました。統合報告書を読んで、企業の思想も見えました。
では、その中で地方の小さな自転車店は、どんな役割を担えばいいのでしょうか。実は、その答えを教えてくれたのは決算書でも統合報告書でもありませんでした。呼子でレンタサイクル事業に関わった後、地域から「チャリチャリ」の運用について相談を受けた、ある出来事でした。
次回は、その経験を通して、「私は、サイクルベースあさひをライバルだと思わなくなった理由」を書いてみたいと思います。

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