【共生への一歩】ベトナム人技能実習生を魅了する日本の「天然猪肉」が繋ぐ未来とは?
ブリット野口です。
日本の人口減少と少子高齢化は、もはや待ったなしの課題です。労働力不足を補うため、多くのベトナム人技能実習生が日本の産業を支える重要な担い手となっています。彼らが異国の地で心身ともに健康に働き、日本での生活に喜びを見出すことは、持続可能な共生社会の鍵と言えるでしょう。
そんな中、彼らの食文化に寄り添い、日本ならではの付加価値を提供する取り組みが注目を集めています。それが、日本の豊かな自然で育まれた「猪肉(ジビエ)」の提供です。
ベトナムの食文化と「天然猪肉」の親和性
ベトナムでは、食肉消費の約7割を豚肉が占めるほど、豚肉は食卓に欠かせません。炒め物、煮込み、麺の出汁など、多様な料理に使われています。特に脂身を好む傾向もあり、豚バラ肉などは人気が高い部位です。しかし、近年は養豚場の豚肉が主流ですが、食文化の資料によると、ベトナムの一部地域では昔から猪肉を食べる習慣も存在し、蒸し焼きや揚げ物、ハーブを使ったソーセージ風の料理など、様々な調理法で楽しまれてきました。ベトナムの食文化において「豚に似た肉」は、日常的に受け入れられやすい土壌があるのです。
ここで、私たちが注目したいのが、日本の山々で捕獲される野生の猪肉です。資料が示す通り、人工的な飼料で太った豚肉よりも、山で木の実や自然の恵みを食べて育った猪肉は、脂身が甘く、赤身は味わい深く、格別の美味しさがあります。これは、ベトナムの食文化の核となる豚肉の風味を、より野性的で上質なレベルで満たすものと言えるでしょう。技能実習生が故郷の味を懐かしむ中で、この「天然の味」を提供することは、異文化での生活における大きな喜びとなり、「日本に来てよかった」という満足感に直結します。
労働力不足解消と地域資源の活用が織りなす「共生の輪」
この猪肉の提供は、単なる食の提供に留まりません。その背景には、日本の抱える二つの課題「労働力不足」と「鳥獣害対策」を同時に解決する、持続可能なシステム構築の可能性が秘められています。
➀労働力の確保と定着の促進
ベトナム人技能実習生が、食を通して日本の風土や文化に深く触れ、質の高い食生活を送れることは、彼らの生活の質(QOL)向上に繋がり、結果として安定した労働力の確保と定着に大きく貢献します。
➁日本の食文化と地域資源の活用
過疎化が進む地方では、農作物に被害を及ぼす猪の捕獲が喫緊の課題です。この狩猟活動で得られた猪肉を、技能実習生の食文化を支える食材として活用することで、鳥獣害対策が地域の食料供給というポジティブな価値に変換されます。
まとめ
日本の豊かな山の恵みである猪肉を、ベトナムの食文化への深い理解をもって提供し、実習生の満足度を高める。そして、彼らが日本社会の労働力を補完することで、地域社会に新たな活力を生み出す。
これは、日本の少子化による労働力不足をベトナムの人々が補い、同時に、日本の狩猟文化と地域資源が、ベトナムの人々の生活を心豊かに支えるという、まさに「共生の輪」です。異国の地で頑張る実習生に、日本の自然が育んだ最高の「ごちそう」を提供する。この取り組みは、日越の友好関係と、持続可能な未来に向けた、小さくも確かな一歩となるでしょう。