「天山ベースが呼び覚ます厳木の記憶」30年前の熱狂とインフラが紡ぐ未来の可能性とは?

Categorised in: , ,

ブリット野口です。

本日、佐賀県唐津市厳木町天川の「九電グループ 天山ベース(TENZAN BASE)」へ足を運んできました。

九州電力の発電所展示館をリニューアルしたこの施設は、ロードバイクで峠に挑むサイクリストたちの憩いの場として整備されています。
しかし、この場所を「点」ではなく「山の一部」として捉え直したとき、私には別の可能性が見えてきました。
厳木町在住の自転車店主という視点から、厳木の過去・現在・未来を繋ぐ30年のストーリーを紐解いてみたいと思います。

1. 30年前の熱狂:ダウンヒルコースとしての「記憶」
今回の視察で私の頭を離れなかったのは1990年代の光景です。当時、すぐ近くの天山スキー場は、夏場にMTB(マウンテンバイク)コースとして開放されていました。

MTBで林間コースを山頂から一気に駆け下りる。あの頃の天山は、九州中のライダーが集まる熱狂の聖地でした。
その後、ブームの終焉と共にその景色は消えましたが、厳木の山々には、今もなおMTBを受け入れてきた「DNA」が眠っています。天山ベースの誕生は、その眠れる記憶を呼び覚ます象徴的な出来事のように感じられます。

2. 「九電インフラ」という名の隠れたトレイル資源
天山ベースの最大の特徴は、九電グループが管理しているという点です。視察して改めて気づかされるのは、この建物の周囲に張り巡らされた「鉄塔補修路(巡視路)」の存在です。

これらは電力インフラを守るための重要な「道」ですが、視点を変えれば、山肌を網目状に繋ぐ広大なトレイルネットワークとも言えます。
静岡県では、電力会社がこの巡視路をMTBコースとして開放し、地域と共生する「Fujiyama Power-line Trail」という先進事例があります。

天山ベースが「休憩所」として機能する一方で、その背後にある巡視路という広大な資産がどう活かされていくのか。

管理主体が明確だからこそ描ける、インフラとアウトドアの新しい関係性がここにはあります。

3. テクノロジーが変える「地形」の価値
30年前のダウンヒルがリフトという「点」の移動だったのに対し、現代にはE-MTB(電動アシストマウンテンバイク)というテクノロジーがあります。

天山ベースに備えられた電源と休憩機能は、このE-MTBユーザーにとっての「ハブ」になり得ます。
急峻な厳木の山々も、モーターの力を借りれば、もはや「克服すべき壁」ではなく「縦横無尽に遊び尽くすフィールド」へと姿を変えます。

近くには、地元の情熱が詰まった「ちやのきMTBコース」もあります。「ちやのき」で磨いたスキルを持って、天山ベースを起点に巡視路という広大なフィールドへ漕ぎ出す。
そんな「回遊性」が、この場所を起点に生まれるポテンシャルを感じずにはいられません。

4. まとめ:厳木の山岳資産を再定義する「点火スイッチ」
今回の視察で感じたのは、天山ベースは単に「ロードバイクで休む場所」という枠に収まりきらないポテンシャルを持っているということです。

過去:スキー場を中心に「下り」を楽しんだダウンヒル時代。
現在:サイクリストの休憩ポイント。隣の集落「ちやのき」が育むMTBコースと新しいコミュニティ。
未来:天山ベースを拠点に、九電インフラ(巡視路)とE-MTBが融合する「広域トレイルエリア」への進化。

厳木の山を熟知する地元住民として、この場所が「点」としてだけでなく、山全体を繋ぐ「入り口」として、どのように変化していくのか。
30年の時を経て、再び、天山にMTBの熱気が戻ってくるかもしれない。そんなワクワクするような可能性を感じた一日でした。

Tags: